第10回関西・ミニラグビージャンボリー交流大会で試合をするラグビースクールの子どもたち。
「第10回関西ミニ・ラグビージャンボリー交流大会」(日本協会主催、関西、兵庫県協会主管)が6月25、26日の2日間、兵庫県淡路市にある佐野運動公園多目的グラウンドでありました。
この大会は10月に大阪・堺で行われる「ラグビーマガジンCUP」と並び、西日本では最大級のラグビースクール(RS)大会です。ただ、「ラグマガ」は1日、「ジャンボリー」は2日間開催で、こちらの方が大がかりです。
舞台となった淡路島には、東は岐阜県の関RSから、西は山口県の山口RSまで、小学5、6年生チーム53が集まりました。初日25日の参加者は2700人。内訳は選手900、指導員、役員300、保護者1500人でした。
午前10時30分の開会式から各チーム2試合×2日、計4試合を行いました。2日間の総試合数は106にのぼります。試合は11分ハーフ、1分の休憩が入ります。
天然芝の多目的グラウンドに小学校高学年用グラウンド(縦40メートル×横60メートル)を5面取りました。
大会実行委員長は関西協会普及育成委員会Under12(小学生)部門の部門長・石田克明さんです。朝4時起きで京都の自宅を出発。役員集合の8時にグラウンドに来ました。
「しんどいことはありません。子どもの成長を見るのは楽しいことです。この大会に参加した小学生の中から、日本代表選手が生まれたりしたらうれしくなりますね」
大会の目的は府県を超えた小学生の交流、そしてラグビーの普及、発展です。京都・亀岡RSの主将、大槻翔陽君は言います。
「2試合とも負けてしまったけど、よかったことが2つあります。最大限の実力が出せたことと、チームのみんなと一緒になってゴールを目指せたことです。僕は去年も参加したけど、タックルがたくさんできるようになりました。走りも速くなったと思います」
参加児童にとっては、勝ち負けに関係なく、自らが成長を感じる大会になりました。
ただ、今回の大会を見て、少々気になったことがありました。
試合でサインプレーとしてのCTBクラッシュやウォーミングアップでダブルタックルをさせているRSがありました。そんな痛い決め事が小学生に必要でしょうか?
この世代に求められるのは自由な発想です。パスやステップを覚える。スペースを認知する。ギャップを作り、突く。それらの習得はコンタクトよりも時間がかかります。
彼らが大人になった時、その能力がヨーロッパや南半球に体格で劣る日本が、世界に伍することにつながるのです。
さらに言えば、大切なのは勝つことではなく、ラグビーを好きにさせること、楽しませること、そして続けてもらうことです。
例えジャパンになれなくとも、ラグビーに携わってくれれば、競技人口の底上げにつながり、この国のラグビーに衰退はない。
もちろん、コンタクトそのものはこの競技に不可欠です。しかし、小さい頃からがんじがらめで痛覚を持たすとラグビー離れを誘いかねない。ケガもある。システムの中で体をぶつけるのは、大人の体付きになる上級学校へ進んだ時でいい。高校、大学では選手権が始まり、いやがおうでも勝利至上のラグビーをしなくてはならなくなるのですから。
日本協会の普及競技力向上委員会で小学生部門の部門長をつとめる北畑幸二さんは、この日は広報担当者として参加していました。その状況を見て話します。
「今のRSは勝利と楽しさが混在しています。私は楽しさの方がより大切ではないかと思います。だから、小学校の段階では協会主催の全国大会はありません」
北畑さんも奈良・生駒RSの指導員だった時には勝ちを追求しました。それが、自分の達成感を測る物差しと思っていました。
「でも、ニュージーランド(NZ)に行って変わりました。向こうのコーチは型にはめない。好きにさせる。そりゃ、子どもたちは試合に負けたら落ち込んでいるけど、すぐ元に戻っています。それでいいのと違いますか」
私もNZで生活したことがあるので、北畑さんと同じ思いを持っています。
大人のラグビーを教えたところで、日本がこれまでNZに勝った試しはありません。
この世代における成功の目安は、勝ち負けでなく、週末を心待ちにするかどうかなのではないかと思います。
最後に、この大会では休息場所として各RSがグラウンドの周りにターフやテントを張っていました。初日が終わった後には、すべてを撤収。翌朝に再構築する申し合わせになっていたのですが、数チームは場所取りも兼ねて、そのまま機材を残して帰っていました。
規則は守りましょう。
ラグビーにおいてルールは絶対です。ジャッジするレフェリーに従います。
そこを理解していない大人が、子どもたちにラグビーを教える資格はあるのか。
「決められたことから逸脱しない」。それを諭すのも指導員の役目です。
来年、この大会が、これまで以上の歓声と笑顔に包まれることを願ってやみません。
(文:鎮 勝也)
大会運営の役員テント、後方はアップ会場