(撮影/松本かおり)
2016年シリーズのフィナーレを飾るにふさわしい熱戦だった。劇的な幕切れに、富士山の麓にあるスタジアムはどよめいた。
6月12日、太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2016の第4戦(最終戦)、富士山裾野御殿場大会が裾野市運動公園陸上競技場でおこなわれた。カップ(最上位)トーナメントのファイナリストとなったのは、前週の東京大会と同じ日本体育大学ラグビー部女子とRugirl-7。秩父宮で初優勝の歓喜に浸った後者が押し気味にゲームを進める展開となったものの、最後はネイビー×スカイプルーのジャージーが笑った。日体大は今季2大会目の優勝を手にするとともに、年間女王の座にも就いた。
前半8分まで0-0。そんな緊張感が漂う試合は終わってみれば24-21。互いに集中力高く戦った試合だった。勝敗を決したのはラストプレー。17-21と4点を追っていた日体大が、及川由季のトライで劇的な逆転勝利を決めた。
「練習してきた動きです。いいタイミングで、いいパスが来た。絶対にトライをとらなきゃ、という思いで走りました」
本人がそう振り返るシーンは、ピッチ中央のエリア。ラックサイドにタイミングよく走り込んだ及川は光月三智からのパスを受けると加速して約50mを走り切った。1分前にピッチに立ったばかりだった背番号2は、ビッグランで大会MVPも手にした。
先制トライは前半8分。Rugirl-7の加藤あかりが奪ったものだった。日体大が自陣深くでラインアウトボールの処理に手間取ったところを攻めてPKを得る。速攻を仕掛け、前週の東京大会でMVPに輝いたスピードスターがインゴールに駆け込んだ。
その2分後に日体大にトライを返されるも、7-5で迎えた後半立ち上がりに片嶋佑果がトライを奪い、14-5とリードを広げるなど試合の主導権を握る時間は敗者の方が長かった。その後2トライされて一時は17-14と逆転されるも、後半7分過ぎにはPKから攻め続ける。グラント・キーシャがトライ。コンバージョンも決めて21-17とした後のキックオフは8分30秒過ぎだった。2大会続けて頂点に指をかけたのだ。立派に戦ったRugirl-7にも大きな拍手がおくられた。
4大会中2度の優勝(秋田大会と富士裾野御殿場大会)と2度の準優勝。安定した戦績を残し、日体大は2016年シリーズの年間女王にも輝いた。古賀千尋ヘッドコーチは、「全部員の努力の積み重ねのお陰」と感激の表情。部員の手によって宙にも舞い、気持ちよさそうだった。
本来の主将、片岡瑞帆が教育実習で欠けるなど3年生以下で戦った東京大会と今回。さらに、新入生ながら攻撃の中核として活躍してきた清水麻有は怪我で今大会の選手登録を見送り、ファイナルではスピード豊かな堤ほの花(こちらも1年生)がヒジを痛めて前半だけで交代した。それでも、チームのパフォーマンスに変わりはなかったのは、「組織は個を上回る」をスローガンにチーム作りを進めてきたからだ。
勝利の雄叫び、「ウイ・アー・ユニコーン」(ユニコーンズ=チーム愛称/一角獣。馬の額に一本の角が生えたような伝説の生き物)の声も最後まで揃っていた。インゴールの向こうにでっかく見える富士山にお似合いの大きな声だった。
(撮影/松本かおり)