秩父宮での香港戦で前進を試みる日本代表のFB野口竜司(撮影:松本かおり)
中竹竜二ヘッドコーチ代行が指揮した若い日本代表が、アジアラグビーチャンピオンシップで4戦全勝し、連覇を遂げた。5月28日に東京・秩父宮ラグビー場で香港代表と対戦し、59−17で勝利。立ち上がりが悪く相手に先制され、今大会初のトライを許したものの、その後リズムを整え、8トライを重ねて逆転勝ちした。
最初の20分間は香港がペースを握った。日本はスクラムとブレイクダウンで反則が続き、前半13分にPGで先制されたあとはリスタートキックオフ失敗、自陣深くのモールでもプレッシャーを受けて落球するなど、悪い流れが続いた。
相手のキックをチャージしても香港にボールを支配され続け、19分、ついに今大会初トライを奪われる。昨年のワールドカップで日本代表のディフェンスコーチを務めたリー・ジョーンズが指揮する香港代表は、44分(後半4分)にもトライを挙げ、ヤングジャパンの楽勝ムードにはさせなかった。
しかし、ジャパンは徐々に修正して自分たちのペースに持ち込んだ。
「0−10と苦しくなったときも、ハドルの中で冷静にみんなで話し、修正できた。ブレイクダウンのところでの手を使うことに(レフリングが)すごく厳しかったので、そこはやめていこう、など。(自分たちの)1本目のトライの形が一番シンプルにとれて、これだ、と。落ち着けた」(日本代表キャプテン・SH内田啓介)
日本が反撃を開始したのは前半24分だった。CTB石橋拓也の突破とFL金正奎のサポートでチャンスとなり、LO小瀧尚弘がゴールに持ち込んだ。
リズムが出てきた日本は28分、ラインアウトからの攻撃でフェイズを重ね、CTB石橋が逆転トライ。35分にはゴール前スクラムから展開してWTBアタアタ・モエアキオラがファイブポインターとなり、その後、PGでも加点して24−10で折り返した。
6月にはカナダ代表、スコットランド代表との本格的なテストマッチがあり、その戦いに臨むスコッド入りをめざす選手たちは、後半もアピール。
後半早々、カウンターでCTB石橋が突破し、SO中村亮土、FL金とサポートしてFL山本浩輝につなぎ、トライ。その後、香港に7点を返されたが、47分にSO中村がインゴールに蹴ったボールをCTB石橋が押さえリードを広げると、53分にはスクラムから展開してCTB石橋がディフェンダーを引きつけCTB前田土芽に渡し、追加点。60分にはWTBモエアキオラがパワフルにゴールへ持ち込み、73分にはスクラムでペナルティトライを獲得し、今大会最終戦を締めくくった。
敗れた香港代表のニコラス・ヒューソン主将は、「最初はやれるところもあったが、時間を追うごとにエラーが多くなってしまった。ブレイクダウン、スクラムもやられてしまった」と悔しさをかみしめた。
リー・ジョーンズ ヘッドコーチは、「場面、場面を切り取れば、やれたところもあったが、フラストレーションを大きく感じる試合だった。日本がいいチームとは分かっていたが、やってみて、改めていいチームと感じた。日本のデイフェンスはラインスピードもはやく、ポジショニングもはやかった。タックルの精度も高かった。我々は80分を戦う一貫性が必要だった」とコメント。
今季、15人制の代表選手24人と香港協会がプロ選手契約を結んで強化体制は整ってきたが、まだまだ発展途上で、長い時間がかかると指揮官は言う。
「(スーパーラグビーの時期と重なり、日本はワールドカップレベルの次のランクの代表選手たちだったが)個人的には、このような試合は大差で負けたとしても互いに得るものはあると思っている。自分たちの力がどの程度のものか分かる。アジアにクラブレベルのコンペティションがあればいいと思っている。我々には、もっと強度の高い試合が必要だ」
一方、勝った日本代表の内田キャプテンは、「集大成を出そう、と言って臨んだ試合。素晴らしいチームでキャプテンができたことに感謝したい」と、たくましさを増した表情でコメントした。
中竹ヘッドコーチ代行は、「最終戦、(香港代表は)強いプレッシャーをかけてくると思っていた。受けに回った時間やアクシデントに見舞われる時間帯があったが、選手たち自身で対応できたことが大きかった」と試合を振り返る。
キックオフで事前に決まっていたマイボールが相手ボールになったり、アクシデントから始まった。しかし、そんなことが起こっても選手たちは冷静にコミュニケーションをとり、勝利をつかんだ。
テストマッチ未経験者が多いチームだったが、指揮官は選手たちの成長を強調する。
「短い準備期間だったが、いいチームになった。選手からたくさんのものを学んだ。組織を動かす人間として、リーダー陣の言動や盛り上げるときの態度など、選手たちから学ぶことが多いチームだった」
6月のテストマッチに臨む日本代表スコッドは来週発表予定。ワールドラグビーU20チャンピオンシップを控えるため、ジャパンの代行指揮をサンウルブズのマーク・ハメット ヘッドコーチにバトンタッチする中竹ヘッドコーチ代行(U20日本代表ヘッドコーチ)は、「児玉健太郎はトライも取れると、できることを一つひとつ示していった。谷田部(洸太郎)の低いタックルもいい。キャプテン(内田)もリーダーシップだけでなくプレーも良かった。誰かというわけでなく、全員を(6月の)ジャパンにも推したい」と語った。