ストーマーズのFBチェスリン・コルビと勝負するサンウルブズWTB山田章仁
(Photo: Getty Images)
スーパーラグビーに日本から初参戦するサンウルブズは、5月21日、オーストラリアはブリスベンのサンコープスタジアムでレッズとの第13節をおこなう。
ここまで2勝8敗1分けというホームのレッズに対し、サンウルブズは1勝8敗1分け。WTBとして先発の山田章仁は、「お互い成績は均衡している。いい試合がしたいな」と語る。現在、リーグ戦で全チーム中最多の8トライをマークしている。
レッズでは、ワールドカップイングランド大会の日本代表副キャプテンとして英雄となった五郎丸歩が2試合連続で先発予定だ。かねて各種メディアが「日本勢対五郎丸」と盛り立ててきたこのカードに向け、同じくワールドカップで躍った山田もこう発言してきた。
「相手の戦力としては対戦したくはない。でも、スーパーラグビーの盛り上がりを考えたら出てきて欲しいです」
19日、ゴールドコーストでの練習後に五郎丸のスタメン入りを知った。改めて言った。
「僕というより、スーパーラグビーにとってはいいんじゃないかな」
5月いっぱいでサンウルブズを離れる。以後は7人制に専念し、8月のリオデジャネイロオリンピック大会出場を目指すのだ。約1か月の休みを挟んで開かれるシーズン後半戦には、参加しない見通しである。
現在トップに立つトライ王争いについても「何も思わないです。どのみち、最後は抜けますし」と断言する。フィニッシャーという職務を全うすべく、チームのチャンスにはアンテナを張り続ける。しかしそれは、あくまで1つひとつのゲームに勝つためだ。
途中離脱は、シーズン開幕前から決めていた。文化を醸成しつつあるサンウルブズを離れることに寂しさもあるが、そこは今年の7月で31歳となる職業アスリートだ。自分なりの物事の優先順位を、厳格に決める。
「何と言うんでしょうか…。自分の一番欲しいものは、オリンピックなので」
世界中が注目するスポーツの祭典を、一生に一度は体験したい。スーパーラグビーでの経験を礎とし、オリンピックに出る7人制日本代表入りに挑む。
「今回のスーパーラグビーではすごくいい経験ができていて、自信にもなっています。いろんな試合をするなか、楽しめるところまで来ている」
ここでの「楽しむ」とは、ただ参加するだけではなく持ち味を発揮している、という意味だ。
フォースに在籍した昨季も、スーパーラグビーでの公式戦に出られなかったなか「(主力組との練習を)楽しむところまではできた。それは収穫」と己に暗示をかけているようだった。やはりその舞台に立てば、持ち前の「ボールタッチ数を増やす」「相手をかわす」という哲学は通用している…。そう、実感している。
昨季まで7シーズン、サントリーでプレーしていたSOトゥシ・ピシとも今回初めてチームメイトとなり、その豊富なプレーの選択肢に感銘を受けた。今季からかつてプレーしたNTTドコモに復帰するFBリアン・フィルヨーンとも、十分に息を合わせている。
「スーパーラグビーでは、トップリーグ(国内最高峰の舞台。山田はパナソニックに所属)では敵同士の選手と、新しいチームを作れる。すごく、勉強になりますよ」
5月の試合は、レッズ戦を含めてあと2試合のみ。山田がサンウルブズを「楽し」めるのは、ファンがサンウルブズの山田章仁を観られるのは、あと2試合のみかもしれない。そのうちの1つが、同学年でもある五郎丸との直接対決なのだ。
(文:向 風見也)