ラグビーリパブリック

1勝同士のフォース戦で見られた、サンウルブズの「我慢」のギャップ。

2016.05.07
最後のアタックで突破し、サポートを探す立川理道(撮影:松本かおり)
<スーパーラグビー 2016 第11節>
サンウルブズ 22−40 フォース
(5月7日/東京・秩父宮ラグビー場)
 第9節で初勝利を挙げたサンウルブズが、1週間の休みを挟んでここまで1勝のフォースをホームに迎えた。成熟度が問われる状況下、芝の上で「我慢」が利かなかったか。
 
 この日は古巣との対決となったWTB山田章仁が前半4分に先制も、直後のキックオフからの攻めが、WTBマルセル・ブラーシェのインターセプトからの失点に終わった。
 受難は続く。13分、SOトゥシ・ピシが「外からのコール」で守備網の裏へキック。が、補球したFBデイン・ハイレットペティにすいすいと走られる。
 勢いに乗ったか、フォースが複層的な陣形を象り連続攻撃を仕掛ける。
 まずは5人が右の狭いエリアに並び立ち、オフロードパスをつなぐ。お次は左の空間を攻略する。最後はまたWTBブラーシェが走るなどし、スコアを5ー14とした。
 フォースは19分にも、敵陣ゴール前で凸凹な網をPRフランソワ・ファン・ワイクが潜る。間もなく、WTBブラーシェはハットトリックを決める。5ー19。かたやサンウルブズは、「我慢」して守備網を整える間もなく、何度も数的優位を与えた。
 CTB立川理道は、1対1のタックルの前段階に問題点を観た。
「タックラーにいいタックルをさせるために周りがやることはもっとある(システムを機能させるための声かけなど)。そこを改善しないと」
 やはり「我慢」が必要な連続攻撃も、落球や反則で句読点を打った。
 後半18、30、39分には、おもに密集周りにランナーが当たり続け、最後の最後にトライラインを割っている。それだけに、前半の攻撃中の「我慢」の度合いが口惜しかったか。 
 SOピシが振り返る。
「最初の25分は気負いした。部分、部分で、ボールキープに苦戦して、無理なプレーをしてしまった。こういう時間帯はベーシックにやることが大事なのですが…」
 渦中、マーク・ハメット ヘッドコーチは、「我慢」に「我慢」を重ねた。
 今季初先発のWTBジョン・スチュワートは、タッチライン際でしばし快走も、自分のサイドで失点を重ねた。26分頃には、敵陣中盤で駆けるもタックルをされながらボールを前に放る。デビュー戦の試練を味わっていた。それでも指揮官は、最後まで試合を経験させた。
 かたやモール守備や肉弾戦への鋭い援護など、「我慢」の働きを示した38歳のLO大野均は、後半26分に交代させた。
 ボスは、メンバーチェンジの背景をこう説明する。
「まだシーズンは続く。(体調管理や経験値などで)マネージメントしなければいけない意味も含まれます」
 次は16日、準本拠地にあたるシンガポール・ナショナルスタジアムでストーマーズとぶつかる。司令塔のSOピシは、一戦必勝を誓う。
「自分たちのプレースタイルをもっと信じなくては。うまくいけば、よく戦える。それを最初から…」
 ファン待望の2連勝のチャンスを、グラウンド内外でのふたつの「我慢」のギャップでふいにした。それでも視線の先には、スーパーラグビーの荒野が広がっている。挑戦すると決めた以上、挑戦するほかない。
(文:向 風見也)
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