昨季トップリーグで大ブレイクした小瀧尚弘(撮影:松本かおり)
4月23日、東京・秩父宮ラグビー場。国際プロリーグのスーパーラグビーへ日本から初参戦するサンウルブズが初勝利を挙げた。ジャガーズとの第9節を36−28で下したのだ。鹿児島実高出身の小瀧尚弘は、こんな思いで見つめていた。
「…この間のジャガーズ戦に関しては、本当に全員がハードワークしていた。この間、九州で震災があったこともあり、日本に元気を届けようという気持ちも伝わって来た。一緒にやりたいなと思いました。入りたいなぁと」
昨季、帝京大を経て入部した東芝では、相手を締めあげるチョークタックルを長所に活躍。国内最高峰のトップリーグで、新人賞を獲得した。日本代表96キャップ(国際間の真剣勝負への出場数)を誇りサンウルブズでもプレーする大野均と、LOの定位置を争った結果だ。
身長194センチ、体重110キロの小瀧は、サンウルブズへ入れなかったことへも、周りからサンウルブズ入りを期待されることへも悔しさと歯がゆさを抱いている。小さな「入りたいなぁ」という声に実感がこもっているようだった。
翌24日、都内のホテルに出向いた。今年度初の日本代表に呼ばれたからだ。30日、神奈川・ニッパツ三ッ沢球技場でアジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)の初戦がある。韓国代表とのテストマッチ(キャップ対象試合)を間近に控えての始動。中竹竜二ヘッドコーチ(HC)代行が急ピッチでのチーム形成を誓うなか、4月中旬に招集依頼を受けた小瀧はこう話す。
「もちろん、短いとは思いますけど、そこは割り切る。それはそれで、成長できるチャンスでもあるかなと思います」
日本代表は昨秋、ワールドカップイングランド大会で歴史的な3勝を挙げた。しかし、競技人気の沸騰に貢献した当時のメンバーは、今度のジャパンには含まれていない。ジェイミー・ジョセフ新HCは、現在務めるスーパーラグビーのハイランダーズとの契約上、秋以降の着任となっている。6月に予定されているカナダ代表戦やスコットランド代表戦(いずれもサンウルブズのマーク・ハメットがHC代行となる)でプレーできるか否かは、計4試合のARCでのパフォーマンスが鍵を握るとされる。
「チャンスだなと思う一方、不安もあって。やれるのかなと。実際、結構、レベル高いので…。ただ、セットプレー(スクラムやラインアウトなどプレーの起点)や単純な当たりでは、前に出れるなぁと。合わせる時間もないので、試合のオンプレー中にもどんどん話していかないと、連携も取れないと思う。自分のことだけではなくて、周りとの的確なコミュニケーションについてもフォーカスを当てたいです。気づかい、とか」
帝京大にいた2014年以来のジャパン入りとなる小瀧は、出場すれば念願のテストマッチデビューとなる。
「出られなかったら自分の実力が足りなかったということ。出られたら世界ランクにも影響するので、自分の仕事をしっかりとやりたいと思います」
パナソニック所属で今回最年長となる29歳の谷田部洸太郎、サンウルブズに在籍する日本代表4キャップの宇佐美和彦らと先発の座を競い合っている。
(文:向 風見也)