ディフェンスもしぶとかったサンウルブズ(撮影:福地和男)
<スーパーラグビー2016 第9節>
サンウルブズ 36−28 ジャガーズ
(4月23日/東京・秩父宮ラグビー場)
日本のサンウルブズが国際リーグのスーパーラグビーで初勝利を挙げた裏には、確かな「我慢」があった。
前節のチーターズ戦は17−92と大敗。HO堀江翔太主将は、その要因のひとつを「点数を取りたいからと焦り過ぎた」ことと指摘していた。この午後は、堅実な攻めを重んじた。
キックオフするや、機敏な走り屋のWTBビリアミ・ロロヘアが負傷退場した。もっとも、急きょ出場となったWTB笹倉康誉はリザーブが多く、「すぐ来てもいいように準備していた。びっくりもしなかった」。
7点差を追う前半20分。ハーフ線付近右のラインアウトから展開し、CTB立川理道が守備網を突き破る。ここからランナーとサポート役が対になったようにボールを継続する。
左大外にスペースができると、端に立っていたWTB笹倉が声を張る。パスを呼び込む。ここでサンウルブズはさらに密集近辺で衝突を繰り返すが、WTB笹倉は「皆、場面、場面で動いている」と「我慢」して待ち、結局、パスを受けトライを決めた。SOトゥシ・ピシのコンバージョンも決まり、スコアは10−10となった。WTB笹倉はこうだ。
「チーム一体で動いて、最後に来たチャンス。皆のおかげで、取れた」
かたやジャガーズは、その「我慢」に難儀した。タッチラインの外へパスしたり、防御網に穴を作ったり。
来日前は約4週間のニュージーランド遠征があり、この日の先発には経験の浅い選手が並んだ。敗れたHOアグスティン・クレービー主将も、「相手に対応しきれなかったのは、疲れからだった」と認めた。
後半16分、サンウルブズのCTB立川が、ジャガーズ守備網の死角へ短いパスを通す。CTBデレック・カーペンターが駆け抜け、SOピシは確実にポールの真ん中を射抜いた。23−25と迫る。
以後、ペナルティゴールを決め続けた。ジャガーズが接点で「我慢」をし切れず、反則を重ねたからだ。
後半31分、サンウルブズのHO堀江主将が小さな空間を突っ切る。2人のタックラーを引きずり、敵陣10メートル線付近から、22メートル線の手前まで進む。ラック。戻るのを横着したか、接点より手前で防御を始めるジャガーズの選手がいた。オフサイドと判定された。SOピシが、確実に蹴り込んだ。29−28。以後はずっと、リードを保った。
失意のラウール・ペレス ヘッドコーチは、「何とかしないと、ますます、次の対戦相手にマークされる…」と言った。
サンウルブズの「我慢」は、攻防の起点であるスクラムにも示された。
23−25と食らいつき迎えた後半19分頃、自陣中盤左での相手ボールの1本である。無理矢理押し込もうとする相手の波を受けても、PR三上正貴は冷静だった。
「相手のフッキングミスでボールが両チームの真ん中にある状態。ここですぐにボールが欲しいからと足を上げたりしないで、我慢して、我慢して、我慢して…」
するとジャガーズの方が、足を球へかけようとした。塊が崩れた。サンウルブズ、ターンオーバー。直後にピシがロングキックを放って、危機を脱したのだった。
(文:向風見也)