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元サントリーの佐々木隆道、日野自動車には「夢しかない」。移籍で新境地へ。

2016.04.06
日野自動車レッドドルフィンズ入団会見をおこなった佐々木隆道(撮影:松本かおり)
 昨季まで日本最高峰トップリーグのサントリーでプレーした元日本代表FLの佐々木隆道が、今季から下部のトップイーストの日野自動車に移籍。6日、都内で入団会見をおこない、「ここには夢しかない」と繰り返した。
 日野自動車はここ数年来、社員の帰属意識の醸成のためチーム強化に注力している。NTTコムでプレーしていたSO君島良夫らプロ選手の獲得にも意欲的で、昨季までは元サントリーで現早大監督のCTB山下大悟も在籍させていた。佐々木獲得の背景を、松川徹部長はこう説明する。
「まだまだうちのチームは、模範の背中を見て、プレーで教えてもらう段階。佐々木選手の背中を見て、さらに(既存の)選手が育つのではないかと思っています」
 大阪の啓光学園高に入学以来、早大、サントリーと、全ての所属先で日本一を経験した佐々木。昨季もリーグ戦でのジャッカル(密集で球を奪うプレー)数を日本人トップの22とするなど、個人としての成長を実感していた。もともとは来季以降も、サントリーが提案した契約延長のオファーを受けるつもりだったという。
 しかし結局、新天地を選ぶこととなる。「新しい目標」のためであった。
「インターナショナルレベルのコーチになることが、自分の新しい目標になりました。そうなることで、日本ラグビーに還元できるものが生まれる。まだスキルも足りないですし、夢のような話ですけど、日本代表の監督になってワールドカップで戦えるように…」
 日野自動車は、3年以内でのトップリーグ昇格やそれ以降の優勝争いを目指している。さらに、社内でのチームの位置づけを高める取り組みにも着手。東京都日野市の本社にある工場は、2020年までを目途に北関東へ移転する。その跡地の利用方法について松川部長は「まったくの白紙」と強調するも、ラグビーの関連施設が建てられる可能性も高い。
 佐々木は関係者を通し、急成長を目指すクラブのビジョンに触れた。感銘を受けた。さらに、別個の背景を持った選手を育てる指導者という仕事の特徴を鑑み、常勝チーム以外でのプレー経験を求めた。這い上がる経験は、確かな肥やしになると考えたのだ。
「サントリーに残ることを前提に考えていましたし、本当に迷ったんです。ただ、ここまで皆さんのイメージのなかでは王道を歩んでいましたが、そこから外れ、いちから強くなる過程を経験すれば、それは必ずこの先に活きる。…いい選手がいい監督になれるとは限らないので、そこは別物として考えています」
 すでにチーム練習には参加している。「サントリーから来た佐々木だという空気を出さない」よう意識していると言い、「まずは、日野自動車のチームにしっかりとコミットする」と続けた。
「僕よりも周りの選手の方が、日野自動車のラグビーのことを理解しています。しっかり、学んでいきたい。ただ、いい準備をするサポートはこちらからしていきたいと思っています。練習の1つひとつのプレーへのこだわりが、試合につながる」
 古巣へは「いつでもおいで」と言われている。日野自動車でプレーを続けながら、元日本代表スタッフでいまはサントリーに入閣する沢木敬介氏のもとへも出向くつもりだ。「サントリーのチームとしての懐の広さを感じています」。指導者に必要なプレゼンテーションの技術を学びたい。
「選手としては、日野自動車を昇格させて順位を上げる。そこに、全てを賭けていこうと思っています。いままでサントリーで経験したことを活かし、いい相乗効果を作りたい」
(文:向 風見也)
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