パスは、ピアノを弾くような手つきで捕るべし。正確なキャッチから、パス。投げ手の方向へフォロースルーを忘れずに…。
「トッププレーヤーに教えるなら、すぐに放れる状態でキャッチするようにと、伝えてもかまいません。ただ、子どもたちには『まずキャッチして、持ち直してからパス』と、ゆっくり教えてもいい」
練馬区ラグビー協会が設立2周年記念の行事として、ジュニアラグビー・クリニックを企画した。かねてから縁のあった元日本代表の四宮洋平を介して講師役を頼んだのは、別件で来日予定のあったワイサケ・ソトゥトゥ氏。東京は帝京科学大学の千住キャンパスで、約20名のコーチに向けた指導方法の講習会と、都内のラグビースクールや中学校の選手を対象としたスキルセッションをおこなった。
かつてのフィジー代表の大型BKで、日本のヤマハでもプレーした。現在はニュージーランドのオークランド協会でアカデミーリソースコーチを務め、少年期のプレーヤーへの指導に携わっている。今回のセミナーでは守備練習で「ウチから!」と日本語も交えながら、オークランドに伝わるコーチングメソッドに沿って指導した。
対話を重んじた。ワールドラグビー(世界のラグビーの統括団体)の指導者向けクリニックで学んだことに、「コーチが一方的に喋るのではなく、選手とアイデアを共有すべき」という教えがあったからだという。
少年向けのタックルスキルのセッション時だった。タックルの伴わないタッチフットを、守備側が手を後ろに回してランナーに肩をぶつけるルールでおこなった。安全性を確保しながら、身体の芯をぶつける感覚を養わせるためだ。
「肩でタックルせず、つい手でタックルしてしまう。どうしてだと思う?」
「…足が出ていないから」
「そう。しっかりと足を動かす(相手と間合いを詰める)」
参加者を集め、ソトゥトゥ氏は言った。
「きょう教えたキーポイントを、是非チームに。ゲームをするうえで大切なのは基本です。この基本ができれば、より試合が面白くなります。中学生くらいの年代で基本と試合の流れを覚えたら、楽しくなる」
オークランドといえば、日本代表キャップを持たない茂野海人が同地域の代表としてITMカップ(州代表対抗選手権)に出場している。このことについてもソトゥトゥ氏は、「ラグビーの経験を積みたいという選手が、しっかり学ぶ場所を得た結果」と、ラグビー王国の指導カリキュラムのよさを語った。
今後も、かつてプレーした日本で指導者や少年ラグビーマンの育成に力を注ぎたいという。