レベルズに挑んだサンウルブズだが最後の壁を破ることはできなかった(撮影:松本かおり)
<スーパーラグビー2016>
サンウルブズ 9-35 レベルズ
(2016年3月19日/東京・秩父宮ラグビー場)
接戦だった前半30分以降、サンウルブズは何度も敵陣の深い位置へ進む。ホームのスタンドを沸かせた。
31分、22メートルエリア右のスクラムからSOトゥシ・ピシが鋭く駆ける。SH日和佐篤が広いスペースへ、広いスペースへと展開する。
左中間。接点へへばりつくレベルズ守備陣を、サンウルブズの複数のサポートがどうにか引きはがす。
しかし、左隅でパスを受けたPR稲垣啓太は一瞬、孤立する。FLアンドリュー・デュルタロらが援護に入った頃には、相手のFBジョナ・ブラシッドとWTBドム・シッパーリーがあたりを取り囲んでいた。鋭さが自慢のPR稲垣だったが、寝たままで球を抱えるノット・リリース・ザ・ボールの反則を取られた。
好機のロスはまだ続く。
37分、SOピシのパスへ鋭角に駆け込んだCTB立川理道が突破。タックルにぶつかり、ほふく前進。球を後方へ置く。正当なスキルの発動。しかしそこへ手を伸ばしたのが、レベルズのFLショーン・マクマーン主将、LOロベティ・ティマニだった。ターンオーバーが決まる。
サンウルブズは続く38分にも、ラインアウトから作ったモールでNO8アダム・トムソンに楕円球をひったくられた。
「特に何かを考えたわけではなく、自分の目の前にボールがあったから行っただけ」
そう振り返るのは、後半も何度か接点の球に吸い付いたNO8トムソンだ。似たポジションで対抗したサンウルブズのFLデュルタロは、こう悔やむほかない。
「ブレイクダウン(接点)はタフ。もう少し、テンポを上げないと」
守備ラインの形成に力を入れているレベルズを向こうに、初勝利を目指すサンウルブズは終始、自慢だったはずの連携を乱した。
攻めてはFLマクマーン主将、NO8トムソン、LOティマニの強靭さを真に受け、守ってはFLデュルタロいわく「時々、ミスコミュニケーションでラインがばらばら」と、後半に3つのトライを奪われた。
「ディフェンス…。BKとの連携についてはもっと話していかないと」
かく語るHO堀江翔太主将が悔やむ攻撃は、19点差を追う後半20分頃のチャンスのシーンだ。
敵陣ゴール前左のスクラム。直前にはレベルズのLOティマニが一時退場処分を食らっていたため、数的優位を活かしてトライラインまで押し切れそうだった。
ところが、SH日和佐は右へパスアウト。右中間でCTB立川が鋭くランも、対するFLマクマーン主将に絡まれる。結局、ノートライに終わった。PR浅原拓真は重ねる。
「皆で同じ方向を見ないと…」
準備期間が他のクラブより2か月は短い新参者のサンウルブズだが、急ピッチでの組織作りが奏功している。この午後もHO堀江主将やCTB立川が相手の背後を抜け出したり、PR稲垣らが低い前傾姿勢で相手の懐を破ったりと、勝負の質を保ててはいる。「初勝利は遠くない」とは、勝ったNO8トムソンだ。
だからこそ、堀江の弁を借りれば「細かぁな」せめぎ合いでのエラーが悔やまれた。
(文:向風見也)