ラグビーリパブリック

どこで、テンポを上げるか? 日和佐篤がサンウルブズの現在地語る。

2016.03.19
ライオンズ戦、ランで仕掛けるサンウルブズのSH日和佐篤(撮影:松本かおり)
 世界最高クラスの国際リーグ戦、スーパーラグビーに日本から初参戦しているサンウルブズは、3月19日、ホームの東京・秩父宮ラグビー場でオーストラリアのレベルズと対戦。歴史的な初勝利の期待がかかる。先発予定のSHで日本代表51キャップ(国際間の真剣勝負への出場数)を誇る日和佐篤が現在地を語った。
 チームは試合がなかった第2節を挟んで開幕2連敗中だ。しかし、他チームより1〜2か月は遅い開幕から約4週間の合流にも関わらず、組織の破たんは最小限に止めている。仲間に戦術略を落とし込むストラテジーリーダーの1人である日和佐も「(チームのまとまりは)日に日によくなっています」と言う。
 攻守がめまぐるしく切り替わるスーパーラグビーの舞台を、こんなふうに見ている。
「テストマッチ(キャップ対象試合)は50試合以上、出させてもらっていて、世界のラグビーはわかっているつもりでした。ただ、スーパーラグビーはテストマッチ以上に(試合の展開が)速い。そこにもう少し対応していきたいなと思います」
 サンウルブズは、日本を代表して国際舞台で戦う組織だ。もっとも、昨秋のワールドカップイングランド大会で歴史的な3勝を挙げた日本代表とは異なる背景を持つ。
 ナショナルチームであるジャパンは、当時のエディー・ジョーンズ ヘッドコーチ(現イングランド代表ヘッドコーチ)のもとで4年間の猛練習を遂行。いつでも同じような複層の陣形を作って攻められるよう、豊富な運動量と勤勉さを磨いてきた。球を保持する方法は、確実性を重視したショートパスと短い距離のランが主体だった。
 クラブチームであるサンウルブズは、複数国から新参者が集まって短期間の準備で開幕を迎えている。個々がもともと立っていた場所の近くに位置取りをするなど、より効率的な陣形形成を意識。一気に大外へ展開したり、逆側の選手にキックで球をつないだりと、ジャパン以上にダイナミックさを求めているようだ。
 ボール保持率アップを題目に掲げるのは両者とも同じだが、そのアプローチの手法はやや異なるのだ。日和佐は言う。
「(両者間のトレーニングの量は)確かに違っています。ただ、スーパーラグビーの10数試合があるなかで(ジャパンの長期合宿に似た)練習量を続けるのは難しい。ボールを継続して速く展開…というのは一緒。ただ、敵陣への進み方が変わってくるのかなと。(サンウルブズは)よりチャレンジして、前にボールを持っていく。いまはフィットネス(持久力強化のための走り込み)をしている時間はない。スピードはコントロールしないといけないです。ただ、敵陣に入ったらテンポは上げていきたい」
 3月12日、シンガポール・ナショナルスタジアムであったチーターズとの第3節。結局は31-32と逆転負けを喫したが、前半は28-13で折り返していた。「アタックに関しては反省点が出なかったのですが、よりよくしようと思ったらディフェンスも考えないと、という感じですね」と、収穫と課題を語る。
「セット(守備組織の形成)を早く…というところですね。いい形でアタックできている時は、ゲイン(突破)もできていて、トライも取れている。ただ、FWとBKのリンクはもう少し詰めていける(向上できる)と思う。シーズンが深まるにつれ、よくなればいいな、と」
 19日のレベルズ戦に向け、「お客様は勝つのが当たり前とは思っていないかもしれない。ただ、とにかく勝ちたい」。サントリーでもハーフバックス団を組むSOトゥシ・ピシと連携を図り、効果的にスペースをえぐりたい。
(文:向 風見也)
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