会見をおこなったクボタスピアーズのフラン・ルディケHCと松木弘志部長(撮影:松本かおり)
国際リーグのスーパーラグビーで歴代最多となる149試合の指揮を執ったフラン・ルディケ氏が、日本のクボタで新ヘッドコーチ(HC)に就任した。3月16日、都内で会見し、「どう勝ってゆくかのブランドを作る」と意気込みを語った。契約期間は3年。
国内最高峰のトップリーグにおいて、クボタは長らく不振にあえいでいる。一昨季は16チーム中13位となり、下部との入替戦に出場。2015-2016シーズンは開幕4連敗を喫するなどし、12位に終わった。チームを変革させるべく、熟練の指揮官を招いた格好だ。松木弘志部長は期待を込める。
「本当のプロフェッショナルなヘッドコーチが、チームの変化をもたらすと思いました。彼はこちらのオファーに対し、我々の弱点、問題点、的確に把握したレポートを届けてくれました。実際に話して感じた人間性も踏まえ、起用を決めました」
現在47歳のルディケHCは、2008年から8シーズン、ブルズを指揮。2009、2010年度のスーパーラグビーを制覇した。昨秋のワールドカップイングランド大会では、フィジー代表のコーチとして組織整備に着手していた。家族の来日が認められたことなどから今回のオファーを快諾。すでに新天地へ合流し、「ここから先の1か月は日本文化、チームのことなどを学んでいきたい」と前を向いた。
「コーチングはコミュニケーションが全てです。ただ、まだ私は日本語を話せません。私自身、自分の安心安全なゾーンをこれほど飛び出したことはありません。短期目標は、グラウンド内外全てのエリアで、選手を5パーセントずつ成長させることです。またシーズン前、シーズン中ともに怪我人を少なくすることも目指します」
ブルズ時代の同僚であるジョン・マクファーランド アシスタントコーチとともに、「クボタウェイ」の確立を目指すと話した。具体的には、肉弾戦とセットプレーの制圧をキーに掲げる。
「クボタウェイは、私たちがどうものごとを進めるかということ。スーパーラグビーの経験上、プライドをいかに持つかが重要だと考えています。昔、クボタはフォワードに自信があった。特にスクラムで相手をドミネートして、自信をつけていくスタイルです。オールラウンドなゲームプランを作ります。相手が全力にこちらへ向かって来るなか、横幅を使って攻撃するだけでなく、縦へダイレクトなプレーをしたり、キック、ショートサイドのアタックを使ったり…。全てを使って、相手と対戦します」
若き日は教師だったとあって、「複雑なことを簡単に伝える。理解の早い人、遅い人に合わせた指導をする…。コーチは先生でなければなりません」とも話す。勝てるコーチの条件を聞かれれば、「負けは自分の頭に、脅威は心に残す。負けたところからどう盛り返すかが大事」と即答した。
今季の具体的な目標は掲げなかったが、「成長をしなくてはいけないことは確か。戦えるチームになれば、勝利は後からついてくる」と強調する。
「試合をリードして、最後に逆転されることが多い。それはフィットネスの問題か、どうゲームを締めるのかの理解が足りないのか…。また、この先はもっとボールをキープできるようにしたい。昨季は大事なラインアウトでボールを失ったりしていた。特別なスキルを持った選手がブレイクダウン(接点)でボールを取り返すことも、必要になってくる…」
このように、現時点で多くの問題解決策を提案している。獲得に向け調整中だという新外国人の力も借り、船を漕いでゆく。
(文:向 風見也)