前半終了前にトライを決めたサンウルブズ主将のHO堀江翔太(撮影:長岡洋幸)
<スーパーラグビー2016>
サンウルブズ 31-32 チーターズ
(2016年3月12日/シンガポール・ナショナルスタジアム)
新参者のサンウルブズにとって初の遠征試合。いまの母国日本よりはるかに暑い気温29度のスタジアムでチーターズと激突した。山田章仁の3トライなどで作った最大18点差のリードをひっくり返された。
背景には、複数の要素が折り重なっている。
「いやぁ、強い」
右PR垣永真之介は、ハーフタイム明け最初のスクラムでそれまでになかった圧力を感じた。序盤から「上がらない」との意識が奏功し、相手を下から突き上げられた。前半20分、30分には、相手ボールを奪い返すこともあった。しかし、28-13とリードして迎えた後半は、チーターズの第一列が総入れ替えした。サンウルブズが押し込まれる構図は最後まで変わらなかった。
流れを渡す要因のひとつだったかもしれないスクラムに関し、中央で組むHO堀江翔太主将もこう語った。
「人が変わって組み方が変わった。早く対応できていれば…。シンプルに相手が強かったこともある」
グラウンドを広く使った攻撃が影を潜めたのも、この後半初頭だった。
4分、チーターズの単騎のランを続けて許し、自陣ゴール前でどうにかターンオーバーも、その脇からPR垣永が突破した先でもう一度、ボールを取られた。守備網が整う前に、FLウゼアー・カシームに走られた。31-20。CTB立川理道が悔やむ。
「相手のミスをミスで返した。そこからトライにもつながりましたし…」
以後は攻めても落球やターンオーバーに泣いた。後半に入り、蒸し暑さによる球の湿りはより増したか。HO堀江主将は「もっとシェイプの立ち位置とかを(確実な捕球のために間隔を狭くするなど)変えたらよかったかな」とも反省した。
流れが傾けば、簡単なエラーも重なる。着実に点差を離すためのペナルティゴールはポールの脇にそれた。キックオフからの弾道は、直接タッチラインの外へ出た。接点で粘ったFLアンドリュー・ドゥルタロは、「こっちのキックオフミスから、チーターズがいいプラットフォームでアタックした」と天を仰ぐ。
時間が経つほど、防御の肉弾戦でも反則を食らった。時にはファンからブーイングを浴びせられる判定もあったが、CTB立川はこうだ。
「矢印は、こっちに向けないと」
後半24分頃からは自陣ゴール前で防戦一方。
31-27と迫られ迎えた30分、NO8エドワード・カークが10分間の退場処分を食らう。
1分後、糸が切れたようにモールを押し込まれた。
31-32。
公式会見後、チームはロッカールームで緊急ミーティングを開いた。
1週間の休息を経て臨んだシーズンを優勢に運ぶも、白星はつかめなかった。「簡単には勝てないな」とは、CTB立川の弁だ。落胆もあろうが、まだまだ道は続く。
「後半、チーターズが気合いを入れてきた」とは、仕留め役の仕事なら果たしたWTB山田だ。「後半の入り。こっちが先に動いていかないと」と、あくまで前向きに改善点を挙げる。
19日、東京は秩父宮ラグビー場にレベルズを迎え撃つ。
(文:向 風見也)