チーターズ戦へ向けて準備するサンウルブズのSH茂野海人(撮影:松本かおり)
世界最高クラスのリーグ戦であるスーパーラグビーに今季から参戦する日本のサンウルブズは、3月12日、シンガポール・ナショナルスタジアムでチーターズとの第3節をおこなう。2月27日にライオンズとの開幕節は13-26と落としたが、マーク・ハメット ヘッドコーチは「当初は選手に何を期待していいのかもわからなかったのですが、個々の決意と関わろうとする気持ち、学習能力の速さに驚いています」と前向きだ。第2節が試合をしないバイウィークに充てられたなか、戦術理解と次戦への対策に時間を割いている。
「経験値が高く、ラグビーの知識の豊富な選手の意見を採り入れています。ストラテジー(戦略面の)ミーティングでどう戦うか、1週間のトレーニングで何にフォーカスを当てるかを話し合います。例えばこの1週間では、アンストラクチャーの(型通りでない)状況でどうプレーするのかが議題に挙がりました」
トップダウンではなくボトムアップ。そんなクラブの気風を、指揮官は当たり前のように明かす。「ディフェンスグループ」でリーダーを任されるPRの稲垣啓太も、「ハマー(ハメット)が質問を投げかけてくれる。新しくできたチームが言われるがままにやっていたら、何の色も作れなくなる。どんどん選手が話すべきだと思っています」と言う。初顔合わせが2月上旬と他チームより2か月は短い準備期間にあって、絆を深めている。ライオンズ戦で押し込まれたスクラムのセッションにも、時間をかけている。元ニュージーランド代表HOの指揮官は、いまの強化の過程をこう説明した。
「他には、リーダーシップグループがあります。彼らはグラウンド外を含めたチームの結束力について話し合っています。スクラムグループ、ラインアウトグループ、ディフェンスグループもあります。彼らのフィードバックを受けて私から話をするなどして、コミュニケーションを取っています。サンウルブズは全体的にサイズが小さいので、コンタクトエリアの(身体をぶつけあう)練習は継続的にやっていかないといけません。スクラムにも、時間を割きました。いまはスクラムコーチがいない状況で、専門的な適任者がいない状況。ですので、スクラム練習は私が見ていました。選手と常に話し合いながら、(メニューを)決めています」
次戦でぶつかるチーターズは、勝敗を左右する接点でジャッカルを多用する。ボールに絡みつくジャッカルという相手の守備技術を向こうに、サンウルブズが意識するのは「ダブルスリー」。攻撃時のサポート役が取るべき姿勢を、自分たちなりに言語化したものだ。ランナーが相手のタックルに倒されたところへ素早く駆け寄り、ダーツの的の下側にあたる「3」を狙うよう鋭く突っ込む。向こう側のサポート役に身体がぶつかった瞬間、一気に膝と腰を上げる…。この一連のスキルについて、WTBも務めるFBの笹倉康誉がこう解説した。
「初戦のライオンズのディフェンスは、僕たちを抱え上げてボールを出させないようにする感じでした。でもチーターズは僕たちを倒して、ボールに絡みつく。いったん(接点の)下側に頭を指してから、上がって行く。そのダブルスリーという形を意識しています」
3月7日の実戦練習では、腰を痛めた日和佐篤に代わって茂野海人がSHのポジションに入った。昨季はオークランド代表としてニュージーランドの地域代表選手権に出場した25歳は、追加招集の形で2月中旬よりサンウルブズに合流していた。「ミーティングで話されたことをしっかり頭に入れている。通用するかどうかはわかりませんが、(接点の脇から)ボールを持ち出せるようにしたい」と、初先発を目指す。
チームは9日、出国前最後の全体練習をおこなう。
(文:向 風見也)