田邉淳コーチにとっても大きな挑戦が始まった(撮影:松本かおり)
南半球の強豪クラブが集うスーパーラグビーへ日本から初参戦するサンウルブズは、3月1日から都内で練習を重ねる。2月27日の開幕戦では、ライオンズに13-26で惜敗(東京・秩父宮ラグビー場)。次節での白星のため、戦術理解度の向上に努める。同リーグで日本人初のコーチとなった田邉淳アシスタントコーチは、「選手がお互いをもっと知ることが大事」と語る。
ライオンズ戦の直後、田邉は前向きだった。チャンスを逃した場面に関し、「トップリーグでは1、2人でボールを出せた接点に3、4人かけている。それで徐々に(サポートの)人数が足りなくなった」と課題も挙げた。それでも、2月上旬からの発足で高い組織力を示せたことには、確かな手応えをつかんだようだ。
「どの選手に聞いても、勝利はすぐそこにあると言っている。その勝利をつかむために、細かいところを詰めていく」
国内最高峰トップリーグのパナソニックでは選手、コーチとして活躍。高校時代からニュージーランド留学をしており、英語と日本語のバイリンガルでもある。今季はサンウルブズの参戦に伴い、かねて目標だった「日本人初のスーパーラグビーコーチ」の座をつかんだ。グラウンド外での準備が進まぬなかでも二つ返事でオファーを快諾し、パナソニックの指導との二足のわらじを履くこととした。チームの初顔合わせ以来、選手や首脳陣との話し合いで攻撃戦術を練り上げてきた。練習場では「自分がどこに立つべきか、わかっていこう」など、礎作りのための声を飛ばす。
「沈みかけたところからスタートしたのはわかっている。そこからどう豪華客船にしてゆくかに、手腕が問われます」
条件面から加入を拒否した日本代表選手も多いなか、新生チームは一部で「泥船」と揶揄されてきた。それでも田邉は、「沈みかけたところから豪華客船に」。ポジティブな言葉に、野望を込めるのだった。
「今回、サンウルブズ入りに手を挙げなかった選手、コーチに悔しいと思ってもらいたい。あなたたちの夢は、スーパーラグビーだったのではないですか、と。僕の仕事は2つあると思っている。ひとつはアタックを見ること。もうひとつは、外国人、日本人の間に入ること。どこにもないマルチカルチャーのチームができるんじゃないかな、と思っている。3〜5年経ったら、サンウルブズでやってみたいという外国人選手が増え、海外へ行っている日本代表の選手がサンウルブズでやっとけばよかったと思う…。そんなチームにしていきたいですね」
次戦は3月12日の第3節。シンガポールでのチーターズ戦だ。
(文:向 風見也)