ラグビーリパブリック

サンウルブズが見せた光。垣永真之介、殊勲のスクラム

2016.02.27
激しくぶつかって、走りも力強かった垣永真之介(撮影:松本かおり)
 強打した左肩を少し下げてロッカールームを出てきた。激闘のあとが感じられる足どりも、上気した表情で話した。
「思っていた通りに(相手は)本当に強かった。パワーが凄かった。痛いし、重いし。でも楽しめた。ただ、負けてしまえば課題が残るばかり」
 記念すべきサンウルブズの初戦で3番を背負った。垣永真之介はボロボロになりながらも後半27分までピッチに立ち続けた。スクラムで押され、押し、倒れ、なんとか起き上がり、また走った。
 2月27日に秩父宮ラグビー場でおこなわれたサンウルブズ×ライオンズ。満員のスタンド(1万9814人)の大声援を受けたホストチームは初戦を勝利で飾ることはできなかった(13-26)。しかし、南アフリカからやって来た大男たちのパワーに怯むことなく、タックルを繰り返した新チームに可能性を感じた人は少なくなかっただろう。個々の選手たちも、それぞれ光りを放つ場面があった。
 24歳のPRが大きな声援を受けたのは後半6分過ぎだった。ライオンズに攻め込まれ、自陣深くで相手ボールのスクラム。垣永は前半から押され、揺さぶられていた。6-19とリードを広げられた後だったから、ここで押し切られたら勝負が決まる状況だった。
 一度目のスクラムはバランスを崩し、組み直し。二度目はサンウルブズが崩したと判定され、ライオンズにPKが与えられた。
 優勢だった側はスクラムを選択する。三度目のエンゲージ。ライオンズが力を込めようが、赤いジャージーは後退しなかった。それどころか押し返す。反則を誘った。背番号3のもとに仲間が集まり、肩を叩いて祝福した。スタンドが沸いた。
「あのときは、絶対に足を下げない、体を起こさない。それだけに集中して耐えました」
 特別うまく組めたわけではなかった。
「いまやらなくて、いつやるんだ。そんな気持ちでした。前から凄い圧力を受けて、うしろからもめちゃくちゃ押された。そんな中で必死に踏ん張った。あの一連のスクラムの時間は30分ぐらいに感じたんです」
 試合の拮抗を保った殊勲のスクラムをそう振り返った。
 ライオンズは強かった。そして予想以上にまとまっていた。事前のスカウティング以上だった。
「映像で見たときは、そんなに低いスクラムではなかったのに、実際は凄く低く組んできた。こちらの低さを分かっていて対応してきたと思います。あんなに低い姿勢からあれだけのパワーで押してくるんですから想像以上。8人の一体感もありました。対応できないくらいに強く感じました」
 でも責任があった。なんとかしなければ粉砕される。だから必死に考えた。周囲と話した。そうやって組んでいくうちに少し慣れて、集中力でビッグスクラムを呼んだ。
 想像以上だったスーパーラグビーのレベル。そんな舞台であと14試合も戦わねばならない。「もっとタフにやっていかないと」と気持ちを引き締めた。
「フィールドプレーでも、日本の低いプレー、速いプレーは通用するんです。プレーしていて感じました。ただ、それ(低く、速いプレー)ができていないときにつけ込まれる。肩を痛めたときも、上半身でタックルにいってしまった。自分の未熟さが分かりました」
 ライオンズの指揮官、ヨハン・アッカルマン ヘッドコーチは新規参入チームの特徴を、「同じ時間をともにしていくうちに結束が高まる。よくなるばかり」と言った。初戦の途中に進化した垣永真之介も、また同じ。ゲームを楽しんで、勝利という結果も手にできる試合は何試合目に訪れるだろう。
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