果敢にアタックするサンウルブズのキャプテン堀江翔太(撮影:松本かおり)
日本で産声を上げ、ついに歩き出したサンウルブズ。しかし、歴史的第1戦は惜敗だった。2016年2月27日、東京・秩父宮ラグビー場。初参戦する世界最高峰リーグのスーパーラグビー開幕節で南アフリカのライオンズに挑み、13-26で敗れた。
全員が集合してチームが本格始動したのはわずか3週間前。母親の死去でニュージーランドに帰国していたマーク・ハメット ヘッドコーチは、初戦を終え、「大事なことは、選手が勝ち負けに関係なく100%の力を出し、このレベルで戦えることを知ること。(準備期間が)短いなか、スタッフも含めて一丸となってよくここまでやってくれた」と語った。
先制したのはサンウルブズだった。開始から6分、SOトゥシ・ピシがPGを決めた。
前半、サンウルブズはスクラムで劣勢。しかし、ディフェンスでプレッシャーをかけ、相手に何度も落球させた。
SOエルトン・ヤンチースのキックが不調で、なかなかリズムに乗れなかったライオンズだが、前半18分、ラインアウトからモールで押し込み、この試合最初のトライを挙げて流れを引き戻した。34分にはWTBコートナル・スコーサンがゴールラインを割る。サンウルブズFBリアン・フィルヨーンのタッチキックミスからライオンズは攻め上がり、SOヤンチースからのインサイドパスをもらって突破、そのまま走り切った。
前半終了前にサンウルブズがPGで加点し、6-12でハーフタイム。
しかし、ライオンズはわずか6点差での折り返しに危機感を抱いたか、後半早々から攻め込み、フォワード選手が細かくつないでFLヤコ・クリエルが抜け出し、トライを決めた。ライオンズのリードは13点に広がった。
それでも、秩父宮ラグビー場を満員にしたファンの前で意地を見せたいサンウルブズは、劣勢だったスクラムで踏ん張るようになり、場内を沸かせた。アタックではライオンズの堅い守りを崩せずにいたが、58分(後半18分)、チーム一体となった連続攻撃でゴールに迫り、最後は主将のHO堀江翔太が初トライを挙げた。13-19。ブレイクダウンでも奮闘し、サンウルブズに勢いが出てきた。
「スクラム自体は体重差があったので押し込まれたところもあったが、組んでいるうちに対応できていった。スクラムのなかでもっと話せれば、もっと良くなると思う。アタックはゲインを切れていたが、セットの球出しがよくなかったので申し訳ない。自分のトライは、ボールが自分にきて置いただけ。ラッキーでした」(堀江)
しかし、65分に反則の繰り返しでSOピシが10分間の一時退出となり、再び流れは変わった。数的有利となったライオンズはその1分後、途中出場のHOマルコム・マークスがビッグブレイクし、CTBライオネル・マプーのトライを演出した。これが決定的となり、サンウルブズは惜敗。キャッツ時代から数えて15年ぶりのプレーオフ進出をめざすライオンズが、ボーナスポイント付き(サンウルブズより3本多くトライしたため)で勝点5を獲得した。
勝ったライオンズのヨハン・アッカルマン ヘッドコーチは「きょうは非常にタフな試合だった。サンウルブズは情熱と気合が入っていた。激しかった」とチャレンジャーを称えた。そして自分たちについては「勝つことはできたが、判断の部分と、やりたいことを貫くところに問題点が残った。そういう部分は試合を重ねるごとに良くなっていくだろう」と語った。
ワーレン・ホワイトリー主将も相手に敬意を表す。
「サンウルブズは誇れる戦いをしたと思う。短い準備期間のなかで、よくあれだけのことをやれたと思う。自分たちは、勝ったことには満足だが、修正点が出た。修正点が出たのは圧力を受けたから。サンウルブズはブレイクダウンでも激しくて、自分たちが勢いづいたところでターンオーバーされたのは痛かった」
一方、ホームでデビュー戦勝利とはならなかった堀江主将も反省と手ごたえを口にする。
「ライオンズはフィジカルが強く、食い込まれそうになったし、食い込まれたところもあったけど、みんなに『絶対に勝つ』という気持ちがあったので、誰もがすぐに立ち上がり、走っていたので嬉しかった」
相手に4トライを許したものの、ディフェンスではみんなよく戻ってタックルしていたと評価。ブレイクダウンについては、「カーク(NO8エドワード・)などがよく球に絡んでくれた。信頼できる仲間です」と語った。
「結果がついてこなくて悔しい。でも、シーズンは長い。このゲームから得たものを次に活かす。きょうはスタンドがファンで埋まっていて、ライオンズは戦いにくかったと思う。ホームという感じがした。次もこういうなかでやれたら、もっといい試合ができると思う」