ラグビーリパブリック

「2度とない」はずの「13」で初陣。サンウルブズの立川理道、勝利を誓う。

2016.02.25
スーパーラグビー開幕戦2日前のトレーニングで汗を流す立川理道(撮影:松本かおり)
 世界最高峰のスーパーラグビーに日本から初参戦するサンウルブズは、2月27日、ライオンズとの開幕節に挑む(東京・秩父宮ラグビー場)。昨秋のワールドカップイングランド大会で日本代表だった立川理道は、本来のSOやインサイドCTBではなくアウトサイドCTBで先発。立ち位置や役割が異なる働き場にあって、「いやぁ…。難しいですよ。難しいけど、頑張ります」と話す。
 幼少期から奈良・天理市で生まれ育った立川は、攻防の境界線であるゲインラインで強みを発揮する。球をもらう前からの守備網への仕掛け、相手を目の前に引きつけながらのパス、鋭いタックル…。ワールドカップではおもにインサイドCTBとして歴史的3勝に貢献した。10月11日のアメリカ代表戦(グロスター・キングスホルムスタジアム/○28-18)の時のみは、大会初出場のクレイグ・ウィングがインサイドCTBに入ったことなどから背番号13のアウトサイドCTBに初挑戦。本人は後に、「僕が13番をやることは2度とないでしょう」と苦笑していた。
 しかし、サンウルブズではその13番を任されている。2月13日のトップリーグ選抜戦(愛知・豊田スタジアム/○52-24)では、マーク・ハメット ヘッドコーチいわく「CTB(の選手層に)問題がある。今後は補強を考えなければならないかもしれないが、いまのチームで13番の仕事をしてくれるのはハル(立川の愛称)」。立川が13番で先発した。戦略上、前年度までのジャパンでは、大きく突破できる選手が入る働き場。周囲を活かすプレーに活路を見出してきた立川は、「このチームの13番が何をするのか。そのメッセージはまだ出されていないので…」と戸惑いを明かしていた。サンウルブズの攻撃システムを説明する延長で、こう考えを述べた。
「(ひたすら全員が同一方向に走っていた)ジャパンのラグビーよりは、少し効率の良い形になっている。そのなかでCTBのコミュニケーションや判断は大事になると思う。いま、13番をできる選手がサンウルブズには少なかった。そこで(首脳陣は)僕がカバーできるかどうかを観たのだと思う。スタッフの方も、僕のベストポジションがどこかはわかってくれているはず。ただ、長いシーズンでは複数のポジションができることは大事になりますし、僕自身も試合に出られればどこでも…という気持ちがあります。慣れていない部分は多いですけど、経験値を積めたら」
 結局、ライオンズ戦でも立川が「13」を担うこととなった。25日の練習後、「(自身の左右にある)スペースはより広いですし、いままでの感覚と比べたら、攻守とも相手との間合いが違う。いい勉強をしてるな、って感じです」とその難しさを語っている。もっとも周りからは、その適応力が評価されている。HO堀江翔太主将も「慣れてないと思うけど、ラグビー選手としての能力は高い。どれだけ適応するか」と期待する。
 立川の本職であるSOとインサイドCTBには、サモア代表のトゥシ・ピシと日本代表の田村優がそれぞれ入る。いずれも司令塔としてキャリアを積んできたメンバーだ。
 勝負を直前に控え、前を向くしかない。その意を込め、立川がライオンズ戦への展望を語る。
「優さんと僕とトゥシが並んでいるんで、誰がボールを持っても、次の攻撃で誰かがコントロールできるようにしていきたいな…という思いはあります。ライオンズは去年もいい結果を残していて、力はある。全体的にまとまったチーム。アタックなんかはワイドに振ってくる。ディフェンスは上手くやらないと、しんどくなる。ただ、ディフェンスはそこまで整備されていない。こっちがいいアタックをすれば、チャンスは出てくると思います」
 他の強豪が12月から準備を進めているなか、サンウルブズは初顔合わせから1か月弱でオープニングゲームを迎える。立川は「勝利は遠いところにある。簡単なところではない」と自認したうえで、断言する。
「全員が勝利を意識しないと、勝利は生まれない。普通にやっても勝てないので、自分たちで勝ち取りに行く」
 堀江主将の「オフの時間も(状態が)後戻りしないように過ごす、とか、とにかくチームファーストで動こう」との意識に感嘆しながら、あきらめぬチームを作っていきたい。
(文:向風見也)
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