ラグビーリパブリック

見返したい気持ちは「余裕であります」。山田章仁、サンウルブズで抱く反骨心

2016.02.25
トップリーグ選抜との壮行試合で2トライを挙げた山田章仁(撮影:?塩隆)
 南半球の強豪クラブが集うスーパーラグビーへ日本から初参戦するサンウルブズは、2月27日の開幕戦(対ライオンズ/東京・秩父宮ラグビー場)を見据える。昨秋のワールドカップイングランド大会でも活躍したWTB山田章仁は、「充実していますよ。皆でコミュニケーションも取れていて」。本格始動から4日目の11日に合流ながら、早くも連携の中枢に位置している。
 国内所属先のパナソニックでは日本最高峰トップリーグのプレーオフで3度のMVPに輝くなど、勝負強さに定評がある。ワールドカップでは、特にサモア代表戦(ミルトンキーンズ・スタジアムmk/10月3日)で魅せた。身体を回転させつつ相手のタックルをかわし、トライを決める。26-5での勝利を呼んだ。身長182センチ、体重88キロの30歳は、一躍、競技の枠を超えた人気者となった。2012年には社会人アメフトのXリーグ挑戦で話題を呼んだが、帰国後には同リーグの複数チームからオファーを受けたという。
 今季は、オリンピックを最大のターゲットとする。「やはり、アスリートにとってオリンピックは大きいです」。リオデジャネイロでおこなわれる今度の祭典から、7人制ラグビーが正式種目となっている。普段は15人制でプレーする山田も、男子7人制代表にリストアップされる。サンウルブズに合流する直前も、シドニーセブンズに出場していた。本人は「まだはっきりとは決めていない」と言葉を濁すが、シーズン途中での離脱も考えられる。メダル獲得への準備に専念するためだ。スーパーラグビーのリーグ戦は7月まであり、オリンピックの7人制ラグビーは8月初旬におこなわれる。
 いまは、目先の戦いに集中する。13日、愛知・豊田スタジアムでは、トップリーグ選抜に52-24で勝った壮行試合に後半から登場する。「まだチームの皆の特徴を把握していない」としながら、味方の突破を首尾よくサポート。2トライを決めた。15〜22日に動いた沖縄合宿では、概ね主力組でプレーしていた。
「まずはここでしっかりとやる。こっちも、世界で戦えますから、いい経験はできる。コミュニケーションを取ったり、周りの色を見たり。それはいろんなチームを観てきたなかで覚えてきた。それは自分の役に立っているかなと思います」
 練習を指導するマーク・ハメット ヘッドコーチの通訳係を担ったり、守備の全体練習後にネイサン・メイジャー ディフェンスコーチと意見を交わしたり。生まれたてのチームで個性を発揮している。
 慶大在学中には2度にわたりオーストラリアへ留学し、卒業後にプロ契約を結んだホンダ、三洋電機(2011年度からパナソニック)に在籍中もニュージーランドでのプレーを経験していた。語学堪能なチームマンとして、自らの資質をフル活用するのだ。
「システムを含め、(選手とコーチの)意見のすり合わせは大事かな、と。いろんなところから来た選手同士のチームで、(開幕まで)時間も少ない。僕のやりたいディフェンスと、周りのやりたいディフェンスのバランスも見ていかなきゃいけないと思います。アタックではもっとフォワードの負担がかからないように、僕らバックスリーが中心にやること(所定の立ち位置でよりボールを呼び込み、接点周辺でのフォワードのぶつかり合いを減らす)も必要かな…と」
 まずは初戦で「いいプレーがしたいですね」と話す。もっとも視線の先には、ある一戦を見据える。
 5月7日、秩父宮での第11節。相手のウェスタン・フォース(オーストラリア)は、昨季、山田が在籍しながら出番を得られなかったチームだ。
――見返したい気持ちは。
 
 山田は言った。
「余裕で、あります。全然、出してくれなかったので。やれるチャンスでは、やりたいと思います」
(文:向風見也)
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