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東芝の第2HO、森太志。サンウルブズ追加招集の裏側と深い愛。

2016.02.24
トップリーグ選抜との試合では走りでも魅せたサンウルブズの森太志(撮影:?塩隆)
 休暇中だった2月9日のことか。スマートフォンが鳴った。東芝の上司である冨岡鉄平監督からの着信だ。「サンウルブズから話が来るかもしれない」。世界最高クラスのリーグ戦へ日本から初参戦するクラブから、自分にオファーが来たというのだ。
「行く? 行かない? 3、2、1…」
「はい、頑張ります!」
 問答無用。「で、その日のうちに、決まったよ、と言われて」。かくして、森太志はサンウルブズへの追加招集要請を受諾したのだった。
 12月にスコッドを発表したサンウルブズは、いざ集まれば複数ポジションでの人材難に直面した。特にスクラムを最前列中央で組む専門職のHOでは、コカ・コーラの有田隆平がけがのため合流すら叶わず。昨秋のワールドカップイングランド大会で日本代表だった木津武士も、故障で出遅れていた。
 HOを探していたチーム側の期待に沿うよう、森は愛知合宿中だった10日にチームへ合流した。2月13日のトップリーグ選抜との壮行試合では、やはりイングランド大会で活躍した堀江翔太主将の控えでメンバー入り。ハーフタイム明けから出場した。強豪国の名門クラブとのリーグ戦を見据え、「コンタクトエリアでのプレーの精度を高めたい」と意気込んでいる。
 
 東芝では、控えに甘んじている。レギュラーは、こちらもイングランド大会の日本代表だった湯原祐希である。しかし今季、入部5年目の森は、日本最高峰のトップリーグでの1試合平均出場時間を昨季の14.0分から16.3分に増やした(不出場試合、プレーオフトーナメントを総合しての平均値)。少しずつ、少しずつではあるが、頭角を現しつつある。
「一昨季は試合が決まった後の出場だけでしたけど、昨季は自分の特徴を出せてきていると感じています。僕自身がそこまで成長したのかはわからないですが、冨岡さんに強みを見つけてもらった。『○○が凄いのだから、自信を持っていけ』と」
 身長175センチ、体重108キロ。鋭いタックルをぶちかましたり、接点のボールをもぎ取ったり。大男にも真っすぐ身体をぶつけられる意欲と強さを売りにする。スクラムでの駆け引きに長ける先輩とは、異なる色を示した。冨岡監督には「トップリーグで最も危険なHOでしょう」と言わしめた。
 HOの追加招集が必要となった際、サンウルブズ側はまず湯原へ声をかけたようだ。湯原は「非常に光栄です」と言いながらも、首を、横に振った。本当にHOが1人もいないのなら助太刀するつもりだったが、チームのテーマが「次回以降のワールドカップを見据えた代表強化」と明示された以上、32歳の自分が顔を出すのは違うと思ったからだ。自身のライバルである森が貴重な経験を積めば、自軍での定位置争いは激しくなろう。しかし、湯原は「あいつが強くなって、こっちも…(負けじと向上する)。東芝はもっと強くなる」と言う。
 帝京大では4年時に大学選手権2連覇を達成した森は、かつて府中ジュニアラグビークラブに在籍していた。その本拠地が東芝グラウンドだったこともあり、冨岡監督も「森はね、一番の東芝ファンですよ」と認めざるを得ない。今度の世界挑戦は、愛するホームの活性化につながるかもしれない。本人は、HO堀江主将の機動力やゲームの読みに「HOの枠を超えている」と感嘆しつつ、「レベルが高い選手のプレーを見て、勉強になる」と話していた。
「今回、すごくいいチャンスをもらったので、成長できたら。コンタクトの精度、勢い。そこには、ずっとこだわってやってきた。練習でしっかりと精度を上げて、海外の選手にぶつかっていきたいです」
 27日、東京・秩父宮ラグビー場でライオンズ(南アフリカ)との初戦をおこなう。
(文:向風見也)
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