(撮影/?塩隆)
ルーキーイヤーだった昨年度はトップリーグで試合出場ゼロ。今季は、いきなりトライ王に輝いた。サントリーに入社したとき、リーグに初めて「学習院大学」の名を刻んだ男が、今度は歴代タイトルホルダーの中にその存在を残した。
1月25日におこなわれたトップリーグ2015-2016の年間表彰式。サントリーの江見翔太は2度舞台に上がった。最多トライゲッター(豊田自動車/安藤泰洋)でベスト15。記者投票、各チーム投票ともWTB最多だった。
CTBでプレーした1年目。今季は学習院大時代にプレーしていたWTBに移り(おもにWTB、FBでプレー)、結果を残せるようになった。本人は「強みを出せた」と話す。強いフィジカルを活かしてボールキャリーに励んだ結果、7試合で6度インゴールに入った。
「1年目は戸惑いしかありませんでした。社会人の環境に順応するのにも苦労したし(現在は新宿エリアの営業マンとして働く)、ラグビーの知識や経験の面が、圧倒的に周囲より少ないと感じました」
大学時代からセブンズ日本代表として世界を経験している。しかし、日常を過ごしたのは関東大学対抗戦Bのチームだ。仲間と真剣に上を目指す日々を送ってはいたが、トップリーグの上位チームに必要なレベルには遠かった。
「いまもコーチに、もっと(ラグビーを)勉強しろ、と言われます」
上昇のきっかけを掴んだのは1年目のシーズン終盤。三菱重工相模原との練習試合だった(2015年1月9日/○ 24-21)。その試合、リザーブからラスト20分にWTBとして出場した。ぱっとしないシーズンのまま終わるのが歯がゆかった江見は、「そのまま終わるのが悔しくて」爪痕を残そうと必死で前に出た。
結果、連続してトライを奪った。逆転勝ちのヒーローとなり、チーム選出のMVPに選ばれた。強みを出してプレーする感覚と自信を得た。
今シーズンはワールドカップイヤーで、春、夏とサンゴリアスからジャパン組や各国代表選手が長くチームを離れた。その合間に巡ってきたプレー機会を活かし、知識と経験を増やした。
戸惑いの1年目から、飛躍のシーズンへ。表彰式に集まった周囲の豪華な顔触れを見れば、その場にいられて嬉しい。しかし、手放しで喜べぬのも正直なところだ。だって、チームはトップリーグ発足以来初めて8強入りを逃し、9位となった。自身のトライでチームを勝利に導けぬことが悔しい。
「被トライというか…自分のディフェンスがまずくて、とられたトライがいくつもある。もちろん自分ひとりのせいでないものもありますが、責任を感じているんです。そこを改善しないといけない」
このオフ、シックスネーションズやスーパーラグビーの放映を見まくろうと思っている。「サベア(NZ代表WTB/ハリケーンズ)など、WTBの動きを画面で追い続ける」つもりだ。その時間もトレーニングの一部と考えて。
今季までチームを率いたアンディ・フレンド ヘッドコーチがセブンズ豪州代表指揮官に就任することも決まり、来季は首脳陣も変わるサンゴリアス。チームにとっては変革の2016年となる。そこで勝利に結びつく活躍をしてはじめて、江見は本物の自信と笑顔を見せるのだろう。