土壇場で1点差に詰めた東芝。しかし、最後に笑ったのはパナソニックだった(撮影:松本かおり)
<ラグビートップリーグ 2015-2016 LIXIL CUPファイナル>
パナソニック 27-26 東芝
(2016年1月24日/東京・秩父宮ラグビー場)
ラストワンプレー。6点リードのパナソニックは時間をかけてボールキープも、ランナーが東芝の防御に羽交い絞めにされる。敵陣中盤で、相手ボールのスクラムを許す。
東芝は、一撃必殺のプレーを仕掛ける。右から左中間へ大きく展開し、CTBリチャード・カフイが相手のJP・ピーターセンをかわす。パス。その左にいたFBフランソワ・ステインが大きく駆け上がる。
対するSH田中史朗は、最後にピンチを招くあたりに東芝の怖さと「チームの甘さ」を見た。
強豪国代表経験者が局面を打破し、東芝が敵陣ゴール前左へ入る。ここから着実にラックを連取か。否。CTBカフイが右大外へ蹴る。パナソニックの反則によるアドバンテージが出たと判断したからだ。
アドバンテージは、プレーを流した方が反則をされた側に有利とされた場合の判定。直後のプレーを失敗してもペナルティの起こった地点で攻め直せるため、思い切ったプレー選択がしやすい。が、この時、アドバンテージは出ていなかった。
直後、WTB豊島翔平が1点差に迫るトライを挙げるも、FBステインがコンバージョンを失敗した。27-26。CTBカフイはただ悔やむ。
「(突破につながるプレーは)その場で決めた。最後、私たちの望む結果にならなかったのは残念です」
終始、味わい深い攻防が続いた。
東芝はLO小瀧尚弘らがランナーをつかみ上げるタックルを連発。悪い流れも力ずくで絶った。
とはいえパナソニックも、あまり接点に人数をかけない相手の守り方に対応。最後のあの場面を含めた数シーン以外では、球を持つ人と援護する人が固まり、着実なボールキープを遂行した。前半3、24分のトライの背後に、その意をにじませた。
「こちらの2人目が早めにつけば向こうは(その接点を)捨ててくる」
こう述懐したHO堀江翔太主将は、スクラムでも準備の成果を示す。左PR稲垣啓太を前にせり出し、相手の右PR浅原拓真の押し込みを封鎖する。右PR浅原は、隣で組むHO湯原祐希に左PR稲垣の圧力が強い旨を報告したという。
その延長線上、後半6分頃の1本は「違う組み方をした」とHO堀江主将。自身が前に出るように仕掛け、東芝のコラプシング(わざと塊を崩す反則)を誘う。構造上、東芝の左PR三上正貴が腰を引いて落としたように映ったか。パナソニックは、直後のSOヘイデン・パーカーのペナルティゴールで20-14とした。
PR稲垣が「全般的にいいスクラムだった」と話す一方、東芝のスクラム職人であるHO湯原は…。
「(HO堀江は)右に行こうか、左に行こうかと、(組みながら)何か、話しているんだろうな、と」
陣地の取り合いでも、勝者が優勢に立つ。戦前は東芝のFBステインのロングキックが警戒されたが、勝ったFB笹倉康誉は「蹴るのはステインしかいない」と分析。「わざとステインの所に蹴ってつぶしに行けば、いいキックは来ない」。前半20分、FBステインの放った弾道は大きく外側へ逸れた。
1点差での3連覇達成を受け、パナソニックのSH田中は涙を流した。
(文:向 風見也)
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