ラグビーリパブリック

日本最高峰ファイナルに大観衆が拍手! パナソニックが東芝倒し3連覇!

2016.01.24
今季無敗で頂点に立ったパナソニック ワイルドナイツ。見事3連覇達成(撮影:松本かおり)
 ジャパンラグビートップリーグ王者を決めるファイナルは、日本最高峰の頂上決戦らしく最後まで手に汗握る熱闘となり、パナソニック ワイルドナイツが東芝ブレイブルーパスを27-26で下し、3季連続4回目の優勝を遂げた。6季ぶりの王座奪還をめざした東芝はホーンが鳴ったあとのラストアタックでトライを奪い、逆転勝利に望みをつなぐ1点差に迫ったが、FBフランソワ・ステインのコンバージョンキックは外れ、野武士たちが歓喜の涙をこぼした。
 パナソニックのロビー・ディーンズ監督は充実した表情で激闘を振り返った。
「なんといったらいいのか……。日本にとってすばらしいラグビーシーズンを締めくくるにふさわしい決勝だったと思います。まさにラグビーのすべての要素がつまった試合だった。FWがセットプレー、ブレイクダウンでしのぎを削り、すばらしいキック合戦をして、最後に東芝が勝利に近いところまで我々を追い詰めた。すばらしい試合だったと思います。試合が終わって両チームの感情はまったく違うと思いますが、今シーズン戦ってきたなかで、我々の方が少しだけ勝利を引き寄せる部分があったのかなと思います。ただ、この結果はそれほど大切なものではありません。今日戦って、決勝にふさわしい戦いができた。その結果、3連覇ができたことをうれしく思います」
 1月24日に東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれたLIXIL CUPファイナル。2万4557人の大観衆が見つめるなか、先制したのはパナソニックだった。前半3分、ラインアウトモールでゴールに迫り、近場を攻めてFL西原忠佑がインゴールに突っ込んだ。しかし東芝は4分後、スクラムからの攻撃で少しずつゲインして敵陣22メートルライン内に入り、日本代表主将でもあるNO8リーチ マイケルが3人のタックラーを振り切ってゴールに持ち込んだ。
 同点とした東芝はさらに17分、ラインアウトからモールで押し込みFL山本紘史が勝ち越しのトライ。だが、今季負けなしの野武士軍団はすぐに追いつく。20分にWTB児玉健太郎がゴール左隅に飛び込むも、東芝のリーチが寸前で外に押し出していたことがビデオ確認され、トライは取り消されたが、24分にゴール前の連続攻撃からキャプテンのHO堀江翔太が抜け出し、コンバージョンも決まって14-14となる。
 パナソニックは38分にSOヘイデン・パーカーがPGを決め、17-14とリードして前半を終えた。
 連覇を狙う前王者は後半早々、SH田中史朗がゴールへ運ぶも、東芝の堅守でグラウンディングできず得点とはならなかったが、直後のスクラムでアドバンテージを得、パーカーがショット成功で6点差とした。
 その後、しばらくこう着状態が続いたが、パナソニックは60分(後半20分)、SH田中がカウンターアタックで防御網を切り裂いてHO堀江につなぎ、最後はCTBのJP・ピーターセンがトライを決めてリードを拡大した。負傷していたベリック・バーンズに代わり、プレーオフで10番を任されたパーカーは、今季キック成功率100%を継続してコンバージョン成功(プレーオフでゴールキック24本連続成功)、13点差とする。
 しかし、打倒パナソニックに燃える東芝は最後まで食らいついた。
 68分、敵陣スクラムからのアタックで、途中出場のWTBニコラス・クラスカが抜け出しトライを決め、キック成功で6点差。そして、フィジカルの強さを武器とするブレイブルーパスは試合終了直前、接点でターンオーバーして最後のアタックチャンスをつかんだ。自陣でのスクラムから攻め、CTBリチャード・カフイが相手CTBピーターセンをかわして突破、サポートしたFBフランソワ・ステインが大きくゲインし、敵陣22メートルライン内左でつかまるも、東芝はボールをキープしてすばやく右へ展開、CTBカフイが無人の右前方にキックし、バウンドボールをWTB豊島翔平が確保してインゴールに押さえ、1点差と迫った。
 コンバージョンキックが決まれば逆転というドラマ。しかし、激しい80分間で疲労はピークに達していたか、重責を担ったFBステインのショットは左に外れ、直後、日本最高峰バトルの終わりを告げるノーサイドの笛が鳴った。
「日本ラグビーが大きく変わった年の大一番で、それにふさわしい試合を演じたと思います。今日はパナソニックがすばらしかった。よく1点差で終われたなと思います。まだ力の差は大きく感じた試合でした」と、試合後に語った東芝の冨岡鉄平監督。「ただ、ブレイブルーパスの選手の1年間の努力はほめたいし、すばらしかった。チャンピオンシップをとっても不思議ではない準備をしてくれた。東芝の歴史が終わるわけじゃないので、またチャレンジできるチームを作りたい。またこういう激しい試合をすることで日本ラグビーが盛り上がっていくと思うので、がんばっていきたい」
 最後のコンバージョンキックについて訊かれた東芝キャプテンの森田佳寿は、「とにかく入ってくれ、と。みんながフランソワの右足に思いを込めて時間を待ったと思う。歓声を聞いて悟ったけど、最後の最後までピッチにいた15人は戦ってくれましたし、僕はそれを他のメンバーと称えるしかなかった」と悔しさをかみしめていた。
 そして、3連覇の偉業を達成した堀江キャプテンは「なんとか強力FWに対してセットプレーを安定させて、準備したプレーを出せてよかったと思います。チームがひとつになれたのは、グラウンドに出ていない選手がよくサポートしてくれたから」とコメント。「今季、僕はキャプテンとして何一つ仕事をしていなくて、パナソニックのラグビーについていくだけで必死な状態のなか、周りが助けてくれたシーズンでした。僕が何もやらなくても周りが動いてくれて、僕がプレーに集中するだけという状況を作ってくれた」
 決勝のマン・オブ・ザ・マッチと、LIXIL CUPの大会MVPに選ばれたのは、ゴールキック成功率100%で勝利に貢献したパーカー。ディーンズ監督は「(パーカーの)この3週間のパフォーマンスはファンタスティックでした。彼自身、こういった大きな試合でプレーするのはチャレンジだったと思います。この2試合、いいメンバーでいいパフォーマンスができていたので、このメンバーで決勝に臨みましたし、最後までメンバーを変えなかったのもそれが理由です。試合に出られない選手をナイツメンバーと呼んでいますが、彼らの成長が著しかったシーズンだと思います」と語り、厚みを増してチーム全体で勝ち取った優勝を喜んでいた。
 トップリーグを制したパナソニックは、一週間後の31日に秩父宮ラグビー場でおこなわれる日本選手権大会に臨み、大学王者・帝京大と戦う。
<ジャパンラグビートップリーグ 2015-2016 最終順位決定戦 結果>
▼LIXIL CUP ファイナル
・パナソニック 27-26 東芝
▼3位・4位決定戦
・ヤマハ発動機 26-22 神戸製鋼
▼5位・6位決定戦
・トヨタ自動車 48-17 キヤノン
▼7位・8位決定戦
・近鉄 22-17 NTTコミュニケーションズ
▼9位・10位決定戦
・サントリー 78-14 豊田自動織機
▼11位・12位決定戦
・Honda 45-38 クボタ
▼13位・14位決定戦
・リコー 27-22 コカ・コーラ
▼15位・16位決定戦
・NEC 32-22 NTTドコモ
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