ラグビーリパブリック

こちらも鞘ヶ谷、小倉、慶應、パナ。児玉健太郎、ブレイク中。

2016.01.10
キヤノン戦では好連係、見事なコース取りからトライを奪った。
(撮影/松本かおり)

 好天。そして、ファンで埋まったスタンド。ニッパツ三ツ沢球技場が沸いた。46-6とパナソニックがキヤノンに快勝した1月9日。青いジャージーが躍動した80分の中で、背番号11もイキイキとしていた。
 鞘ヶ谷ラグビースクール、小倉高校、慶應義塾大学。ワールドカップで世界を沸かせた先輩WTBと同じプロフィールが並ぶ。ただ7歳(6学年)若い。児玉健太郎だ。ルーキーイヤーだった昨季は、まったく試合出場の機会がなかった。しかし今季途中から11番を背負い、期待に応える働きを見せている。怪我で戦列を離れている山田章仁の穴を感じさせない。

 キヤノン戦でも目立った。前半18分、味方のハイパントに反応良くチェイス。ダイナミックかつ計算されたジャンプでクリーンキャッチし、競り合った相手を地面に転ばせた。チームに勇気を与えるプレーだった。
 その2分後には鮮烈な走りで魅せた。ターンオーパ−から攻めたボール。FB笹倉康誉の内返しのパスを受けると鋭くインサイドブレイク。追ってきたキヤノンFBウィリー・ルルー(南アフリカ代表)のタックルを振りほどいてインゴール左スミに飛び込んだ。

 大きな歓声が飛んだ、このトライ。児玉の成長を物語るシーンだった。
「インサイドを抜いたので、(防御のウラに出たら)すぐに外で勝負だろう、と。笹倉さんといいコミュニケーションがとれました」
 WTBだ。トライをとるのが仕事である。以前はその気持ちが強すぎて、自分が自分が、の思いばかりが先行した。周囲を活かし、周囲に活かされるスタイルに転換できてプレー機会を得られるようになった。「トライをとるだけでなく、そのプレーを生んだ働き、ボールを持っていないときのプレーも評価してくれるチーム。それが楽しみになっています」と笑う。

 ロビー・ディーンズ監督との個人面談が定期的におこなわれる同チーム。その時間が、自分を成長させてくれる。1年目、衝撃的なことを言われた。
「身体能力は高い。だけどラグビープレーヤーじゃない、と。ショックを受けました。周囲とのコミュニケーションがとれていない、ということだった。それがあってこそラグビー、ということだったと思うんです」
 北川智規をお手本にした。いつも声を出している。みんなに情報を与えるからチームに血が通い、自分もいい形でボールを受けられる。意識を変えた。
「チームの歯車になることでプレーの幅が広がりました」
 今季リーグ戦の第4節、NTTコム戦で初出場初先発(プレシーズンリーグは除く)。翌週の東芝戦では初トライも決めた。Aチームに入り、厳しい空気の中で試合を経験してこそ見える景色が、自分を成長させてくれていると感じる。

 大きな存在である先輩、山田への意識を「ああいうプレーをしたいなと思いますが、この部分は無理、この部分はもっとできる、というものがある」と話す。
「ゴール前のPKでSHから直接パスをもらい、外にトライを取りにいくような理屈なじゃない部分は真似できないな、と思うことがあります。でも、ブレイクダウンやディフェンスにがっつり入るところは(自分は)もっとできる。コンスタントにいいプレーをし続けたいですね」
 来季は福岡堅樹(筑波大)、藤田慶和(早稲田大)らがチームメートになる。同じチームにジャパンのWTBがまた増える状況をどう生きるのか。
「(ライバルが増えて)しんどいな、嫌だなと思う反面、僕がパナソニックに入った理由はワールドカップを目指したいからでした。だから身近にライバルがいるのは嬉しいし、楽しみですね」
 チームも自分もますます進化する状況がやってくる。今季のクライマックスでもっと成長し、激化する競争に挑みたい。

 

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