ラグビーリパブリック

13分の閃光。特別枠出場の京都成章、國學院栃木との接戦制し「3冠阻止」へ

2016.01.02
國學院栃木戦でプレーする京都成章のキャプテン本郷泰司(撮影:松本かおり)
 湯浅泰正監督は、初戦で左足首をねんざしたCTB本郷泰司主将を控えに回した。怪我の状態を鑑み、「できれば、出したくなかった」と思っていた。それでもゲームを前に、本人に聞いてみた。
「試合展開が苦しかったら、と思うんだけど、どうや?」
 本人は即答した。
「出たいです」
 2016年1月1日、大阪・花園ラグビー場の第3グラウンド。全国高校ラグビー大会の3回戦にあって、京都・京都成章高(2年連続8回目)は栃木・國學院栃木高を相手に厳しいクロスゲームを強いられた。
 0-3とリードされた後半初頭、湯浅監督がCTB本郷主将に声をかけようとしたら、本人はすでにウォーミングアップを始めていた。心が通じ合う感触を得ながら、指揮官はエース投入を決めた。間もなく、閃光が放たれる。試合は17-15で勝ち切った。
「苦しいゲームになるのはわかっていたので、その緊張感を楽しもうとは話していました。まぁ…頼もしい奴らですわ」
 試合後、湯浅監督はこう声を絞る。接戦を乗り切った選手を、ただただ称えるのみだ。府予選決勝で敗退も、今度の第95回大会では参加枠が増設されたため、全国の舞台に立つことができた。「びっくりしました。素晴らしい成長です。ずっと、タックルしていましたね」と目を細める。
 前半からフェーズにフェーズを重ねる國學院栃木高に対し、鋭い出足のタックルを重ねる。攻めてはグラウンドの両端と中央部に複数人のユニットを配列し、相手守備の隙間をえぐった。後半10分にはFB西川哲虎が左タッチライン際を切り裂き、トライを決める。5-3。この日最初のリードを奪った。
「プライドです。ディフェンスは成章の伝統なので。1人では止められなかったら2人、3人で止める、と」
 こう発するのはCTB本郷主将だ。身長181センチ、体重85キロの高校日本代表候補は、逆転した直後の後半11分から出場。持ち前の突破力で、チームの攻撃組織をより機能させる。16分、チームが振り子のように球を回して敵陣22メートルエリアに到達すると、左中間のスペースをCTB本郷主将が破る。ゴール前でFWがモールを形成し、17-3とさらに点差をつけた。
 そして19分、自陣22メートルエリアから大きく突破したNO8中辻厳毅をサポートし、自らインゴールへ飛び込んだ。24分にはお役御免。ロスタイム以降の反撃で2点差に迫られるも、勝ち切った。
「自分たちの流れに持ってこれるように、と。何をすればいいかは前半の試合を観てわかっていた。抜けるプレーヤーはいるので、そこへサポートにつこうという話はしていました」
 3日の準々決勝の相手は、大阪・東海大仰星高(3年連続16回目)だ。昨季8強も、今季は春の全国選抜大会、夏の全国7人制大会を制覇。3冠獲得が期待されている。府予選敗退組ながら勝ち上がってきた京都成章高のリーダーは、次戦への先発を希望している。
(文:向 風見也)

準々決勝抽選にて。本郷主将率いる京都成章は東海大仰星と対戦することになった
(撮影:松本かおり)
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