将来を嘱望される静岡聖光学院の影山駿介(撮影:松本かおり)
迷いもなく言い切った。
「人生が変わった。私生活をきちんと過ごせた時、ラグビーをやっていてよかったと思うことがあります」
全国高校ラグビー大会に出場した静岡・静岡聖光学院(2年連続4回目)のWTB影山駿介は、高校1年の5月にサッカー部から転部した。中高一貫校にあって、星野明宏総監督は中等部1、2年の頃から学年主任として影山を見てきた。そのうえで、「(高等部でのサッカー部では)人間的なポテンシャルを持て余しているところがあった。安定した生活によどんでいたというか…。(ラグビー部に)かなり強引に誘いました」。身長190センチ、体重90キロの体躯でロングキックを放つ才気は、まもなく高校日本代表候補やセブンズアカデミーに選ばれるようになった。
勝負は厳しかった。大阪・花園ラグビー場での2回戦は、國學院久我山高(2年連続40回目)に7-35で敗れた。
星野総監督いわく「我々が次のステップへ行くにはいいチャンス。ビッグネームと真っ向勝負できるのは、これとない経験」との思いで臨み、前半は7-7と互角だった。しかし、後半5分頃につかんだ敵陣ゴール前でのスコアチャンスを、ミスで失った。以後、関東屈指の才能集団を前に後手に回った。7-35で涙をのんだ。悔し泣きする選手の肩に手をやる星野総監督は、「勝負論は成立していた」と振り返った。
春の全国選抜大会(埼玉・熊谷ラグビー場)で左ひざ前十字靭帯を断裂したWTB影山は、今大会初先発。2本あったペナルティゴールは外し、自陣でキックチェイスを浴びるなど、チームが苦しんだ後半は苦しんだ。
「(ペナルティゴールの)当たりは悪くなかったんですけど、もう少しボールを(足で)押し込めたら…。(チェイスされた場面は)ずれて蹴られたら、と」
星野総監督は、「(WTB影山は)ハイリスク、ハイリターンの選手。リターンのところをもう少し得点に結び付けられれば、もう少し変わった展開になっていたかも。ただ、人間力が高まればラグビーの能力も高まるという仮説を証明してくれた」と述懐。9、10月のワールドカップイングランド大会を観て日本代表入りを強く希求するようになったWTB影山は、「次のステージに向かって、切り替えていかないと。ひとつひとつのプレーの精度、細かいところを磨いていきたい」と前を向く。卒業後は中大に進む。
(文:向 風見也)