ラグビーリパブリック

カマイシ大敗も、物語は、まだ続く。

2015.12.06
釜石はこれでトップチャレンジ2へ。12月13日に九電、12月26日に中部電力と戦う。
写真はLOでフル出場の伊藤剛臣。(撮影/松本かおり)
 もう31年もの歳月が流れた。日本選手権7連覇の“北の鉄人たち”は、釜石だけではなく日本中のラガーマンの英雄だった。その魂を受け継ぐ釜石シーウェイブスが、トップリーグを目指し、全勝でトップイーストの決勝に挑んだ。12月5日(土)14時、秩父宮ラグビー場にてキックオフ。相手は三菱重工相模原ダイナボアーズ。トップイースト2連覇中の強敵だ。
 結果からお伝えする。予想外の大差でかつての日本一のチームは敗北した。
 つまらないミスから敗因は生まれる。前半7分、釜石がタッチに出ると思い見送ったボールを三菱重工がキャッチ、モールから左オープンに展開して、そのままWTBパトリス・オリビエが左隅にトライ。「最初にミスからアタックされてトライを許し、前半に建て直しができなかった」とNO8須田康夫主将。釜石は前半だけで5トライ3ゴール1PGを奪われ34-0。「キックをうまく使いながら敵陣でアグレッシブにいくというゲームプラン通り」と、三菱重工、佐藤喬輔監督が言うように、敵陣に入ると突破力のある外国人選手がパワーでトライをねじ込んでいった。
 後半になっても三菱重工の勢いは止まらない。6分、ペナルティから得たラインアウトから、モールを作り、左オープンに回して、23番WTBロコツイ・シュウペリがトライ。ここまでの三菱重工のトライはすべて外国人選手。さらに3トライを重ね、後半25分、58-0とした。
「スクラムだけでも押してみろ!」
「優勝しに来たんだろ!」
 大漁旗が舞うバックスタンド側では怒号が飛び交っていた。釜石からやってきた応援団が、あの頃と変わらず日本一の熱度で、選手たちを鼓舞していたのだ。
「みなさーん、応援してくださーい!」
 小さな大漁旗を振りながら、子ども応援団もスタンドに向かって叫んでいた。
 試合終了間際、釜石はようやく一矢を報いるトライを返す。「勝ったよ!勝った!」さっきまで大声で応援していた子どもたちは抱き合って大喜び。ゴールも決まってノーサイド。
 最終スコアは58-7だった。
 試合を観戦していたV7鉄人のひとり、日本代表の左プロップとしても活躍した石山次郎氏(58)が重たい口を開く。
「負けたのは仕方がない。だが、こんな負け方はダメだ。また応援したいと思ってもらえる負け方をしなきゃいけないんだ」
 悲願の優勝は逃したが、トップリーグ入りを懸けたトップチャレンジへの挑戦は終わっていない。
「切り替えるのが得意なので来週の試合に向けて頑張リます」
 須田主将は、大敗のショックを払拭するようにそう語った。
 震災以降、釜石市民にとって、ラグビーは不安な未来に進むための「希望」だった。あれからもうすぐ5年、釜石シーウェイブスが再び日本の頂点に輝くための物語はまだ始まったばかりだ。
(文・シギー吉田)

愛があふれている釜石シーウェイブスの応援席。(撮影/シギー吉田)
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