ラグビーリパブリック

九州チームのプライド見せる! コカ・コーラは前を向く

2015.11.21
今季開幕から2試合連続でレッドスパークスの9番をつける香月武(撮影:SUSUMU MAESHIMA)

「コーラひとつじゃ危ないですもんね」
 九州ラグビー協会の森重隆会長が言った。トップリーグ開幕前のプレスカンファレンスで、九州から3チームが継続して日本最高峰リーグで戦えるようになるにはどうしたらいいか、と訊かれたときだ。今季、宗像サニックスブルースと九州電力キューデンヴォルテクスは地域リーグで汗を流しており、トップリーグで戦うのはコカ・コーラレッドスパークスしかいない。
 九州ラグビー界を改革して、この地から日本ラグビーを盛り上げていこうと真剣に考えている森会長は、いま頭にある構想をその場で口にはしなかったが、期待を込めて、ジョークまじりにレッドスパークスに発破をかけた。
「コーラが負けて九州にはトップリーグチームがいないということになれば、ちょっと怖さがある。そういう意味でも、コーラに頑張ってもらわないといけない」
 隣にいたキャプテンの山下昂大は苦笑いしたが、すぐに表情は引き締まった。

 コカ・コーラは過去2季連続で14位と苦しみ、入替戦で辛うじてトップリーグに残留したチームだ。今季はプレシーズンリーグでも思わしい結果を残せず、トップリーグ開幕直前に山口智史監督が退任、監督補佐だった臼井章広氏が指揮を執ることとなった。
「私自身も正直、戸惑いもありました。ただ、チームとしてやることは変わらない。しっかりラグビーと向き合あって、チーム一丸となって戦おうと選手に伝えました。前を向いて頑張っているところです」と新監督は語る。

 目標は、トップ8によるLIXIL CUP出場だ。達成は簡単でないのはわかっている。しかし、山下キャプテンは「九州唯一のトップリーグチームということで、責任とプライドを持って戦いたい。コーラらしく、すばやいラグビーを展開して、一生懸命プレーしたい」と決意を表明した。

 開幕戦はアウェイで、NTTドコモレッドハリケーンズに19-23と惜敗した。セットピースは良くなく、ハンドリングエラーも多かったが、最後まであきらめない姿勢はこのチームの魅力だ。
 ドコモ戦、キックオフのたびにWTB川口皓平が果敢に突っ込んだ。マオリ代表で主将を務めたこともあるCTBティム・ベイトマンは鋭いステップでSH香月武のチームファーストトライを演出した。ブレイクダウンではFL山下、NO8上本茂基らが激しくファイトし、フォースのスターだった新加入のLOサム・ワイクスも体をはり、前主将のFL豊田将万は力強いランで活気づけた。PRの田中智広と日比野壮大は途中出場でトップリーグデビューを果たし奮闘。8年目のSO山田久寿は後半からグラウンドに入ってすぐにキックをチャージしてチームに流れを呼び込み、終盤には自らトライを決めて4点差にしてボーナスポイントをもたらした。HO平原大敬はドコモの新戦力となった南アフリカ代表SOハンドレ・ポラードにしぶとく食らいつき突進を止めた……。

 チームには、今秋のワールドカップで戦った選手は1人もいない。しかし、「可能性を秘めた選手がたくさんいる」と臼井監督は言った。
 FL豊田、HO有田隆平、LO桑水流裕策は日本代表キャップ保持者。桑水流はセブンズ日本代表主将でもあり、来年のオリンピックへ向けて7人制の活動も多くなってくるが、レッドスパークスの主軸として指揮官は期待している。2年目となる元オーストラリア代表のWTB/CTBニック・カミンズは、昨季はトライこそなかったもののディフェンスで奮闘して臼井監督の強い信頼を得た。

 だが、一番のキーマンとなるのはやはりキャプテンの山下だ。日本代表のリーチ マイケル主将がワールドカップ後、国内シーズンを前にした会見で「トップリーグの選手全員が日本代表をめざすくらいの気持ちでプレーしてほしい」と言ったが、U20日本代表の経歴を持つ25歳の山下はもちろんそのつもりだ。
「プレーヤーである以上、一番上のステージというのは僕の目標です。小さいころからラグビーをしていて、日本代表になりたい、海外でもプレーしたいという、夢に近い目標を持ってきた。リーチさん(東芝)とか、ブロードハーストさん(マイケル/リコー)とか、自分と同じポジションの選手が世界で活躍をして、彼らと同じリーグにいる。彼らのようないい選手たちから学んで、あれだけ大きい選手が低いプレー(低く突き刺さるタックルなど)をできるので、僕も負けないように、低くて、自分らしい機動力を活かしたプレーをしたい。(自身の日本代表入りは)客観的に見て、いまはまだすぐには厳しいと思うんですけど、そこをしっかり目標としてやっていきたい」

 九州にも、目標に向ってガムシャラな男たちはたくさんいる。コカ・コーラレッドスパークスは燃えている。日本ラグビー界を驚かせたい。

開幕前の会見で決意を語った山下昂大主将(左)と臼井章広監督(撮影:Rugby Republic)
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