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和製フーパー目指すNTTコムFL金、24歳でTL開幕戦のゲーム主将へ!

2015.11.12
8月下旬、東京ガスとの練習試合でプレーするNTTコムの金正奎(撮影:松本かおり)

 マイケル・フーパー。オーストラリア代表のFLだ。身長182センチ、体重101キロと国際級にあっては小柄も、接点の周りで低い前傾姿勢を貫く。まだ24歳だが、いぶし銀。ジャパンのFLリーチ マイケル主将にも「ベテランみたいなプレーをする」と驚かれる。

 ワールドカップ(W杯)イングランド大会では5試合に出場し、準優勝を果たした。10月31日、トゥイッケナムスタジアムでの決勝戦では、ニュージーランド代表に17-34で屈したが、持ち味なら発揮した。

 前半17分頃。ニュージーランド代表が攻め込む。ランナーをサポートする選手が、肉弾戦でオーストラリア代表のタックラーの上にのしかかる。密集から素早く離れることを妨害されたタックラーは、「ノット・ロールアウェー(ずっと接点に滞留する反則)」を取られる。ニュージーランド代表は速攻を仕掛ける。

 オーストラリア代表の悪い流れを寸断したのが、FLフーパーだった。さらなる前進を狙った相手ランナーが倒れるや、その選手の持つ球へ自らの腕を絡める。今度はニュージーランド代表から、ノット・リリース・ザ・ボール(選手が寝たままボールを手離さない反則)を誘った。すっと起き上がり、不敵な笑みを浮かべたのだった。

 金正奎。こちらも公式では「身長177センチ、体重93キロ」と小柄なFLは言った。「お手本です」。そう。この人は和製フーパーを目指す。ちなみに自己申告によれば、体重は「昨季は91キロで今季は95キロくらい」とのことだ。

 日本最高峰であるトップリーグは11月13日に開幕する。昨季8位のNTTコムは14日、東京・秩父宮ラグビー場で同9位のリコーを迎え撃つ。FL金は在籍2シーズン目ながら、ゲーム主将として先発する。明るい口調に、自信をにじませる。

「外国人だからといって臆することなく(コンタクトに)いけている。スピードも速くなっている」

 今年は3月からの3か月間、ニュージーランドへ留学した。ワイカト協会のクラブチームであるユニバーシティーで、主力チームのレギュラーを張った。ビザの関係であらかじめ帰国日程は決まっていたが、期間を延長して欲しいと思ってしまった。充実していたからだ。

「フィジカルもそうですけど、ラグビーへの理解力も上がったと感じます。なぜこのプレーを選択したのか、と、1つひとつフィードバックもしてくれた。前までだと何が何でもブレイクダウン(接点)に入ろうとしていましたけど、いまは試合展開によって自分のプレーを変えることができてきている」

 チームからは、船頭役として期待される。2年時に全国高校ラグビーで優勝を果たした大阪・常翔啓光学園時代は、最終学年のシーズンを主将として過ごした。早大時代も副将を務め、NTTコムへは将来のリーダー候補として採用された。今季は9月からのプレシーズンリーグで2試合、ゲーム主将を務めていた。

「自分のやることを100パーセントやって、チームのことを見る…。(立場に関わらず)そういうリーダーシップは取ってきた。その意味では、やることは変わっていないです」

 目指すは日本代表だ。先のW杯のジャパンには、FLに大柄な海外出身選手が並んでいた。そんななかFLフーパーと同い年のリーダー格は、地殻変動を狙うのだ。

「それ(代表入りへの意欲)がないと、やっている意味はないと思うんです」

 対するリコーのFLは、そのW杯で活躍したマイケル・ブロードハーストである。

(文:向 風見也)
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