ラグビーリパブリック

NZと豪州の指揮官 選手を称え、すばらしいラグビーに感謝

2015.11.01
オールブラックスとワラビーズの魂のぶつかり合い(Photo: Getty Images)

 ワールドカップ優勝杯を手にしたリッチー・マコウ主将と一緒に会見場に現れたニュージーランド代表のスティーヴ・ハンセン ヘッドコーチは、いつものように落ち着いた表情で言葉を発した。
「まず初めに、言うまでもないが、勝負事では勝者もいれば敗者もいる。チームを代表して言わせてもらうが、オーストラリアは相手として本当に素晴らしい。21-3となった時点で白旗を上げるチームもいるだろうが、4点差まで詰め寄った。本当に頭が下がる。そういった相手に、この結果は誇れるものだ」
 ハンセン ヘッドコーチはよく、「心配は気持ちの無駄遣いだ」と言う。4点差まで迫られたが、彼は冷静だった。
「ああいう状況を考え、前もって計画しなければならない。誰かが一時退場になる状況がくるとわかっていた。そうなったときに何をしなければいけないか、誰もが理解していることが重要だ」

 欧州クラブへ移籍するSOダン・カーター、CTBマア・ノヌー、CTBコンラッド・スミス、引退を決めているHOケヴィン・メアラム、そしておそらく、前人未到の148キャップで2回もワールドカップの栄冠を手にしたFLマコウ主将にとっても、この決勝がオールブラックスでのラストゲームとなる。
 これ以上の台本はない。みんなでこの晴れ舞台をお祝いしようとハンセン ヘッドコーチは言った。
「すばらしい選手たちがピッチには立っていた。オーストラリアを倒すために全力でプレーしていた。みんなで声を大にして褒めたたえるべきだ。母国が誇れることを彼らは成し遂げたのだから」

 敗れたマイケル・チェイカ ヘッドコーチは、「我々も勇敢に反撃したが、彼らがワールドチャンピオンだ」とニュージーランド代表を称えた。
「彼らは前回大会からずっと最高のチームであり続けた。それを覆すために全力を尽くし、今夜それを実現できたかと思ったが、少しだけ力が及ばなかった」
 18点差から4点差まで追い上げるも、思うような結果には届かなかった。相手SOカーターのドロップゴールより、その後のスクラムで反則を犯し、PGで10点差にされたことが痛かったと語った。
 しかし、懸命に戦った自分たちの選手たちを心から誇りに思っている。
「信じなければ何も始まらない。信じてきたからこそここまで来れた」
 このままオールブラックスの独走を許すつもりはない。
「前を向き、常に進歩する努力を怠らないようにするしかない。長い間トップに立っているチームだが、我々も近づいていると思う。オーストラリアのラグビーを引き続き進化させたい」
 そして、スタジアムのファン、オーストラリアの人々に感謝の言葉を口にしたあと、こう言った。
「すばらしいスポーツだ。本当にありがとう」

(文:竹中 清)
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