今秋のラグビーワールドカップ(W杯)で3勝を挙げた日本代表は、ラインアウトでの健闘が目立った。2メートル級の選手はゼロと国際級にあっては小柄な陣容ながら、スティーブ・ボーズウィックFWコーチを軸に相手の隊列を分析。マイボール獲得率は93.5%を記録した。
大学ラグビー界にあって似たような地位を築いているのは、国内最古豪の慶大か。高校生のスカウティングの幅に限りがあるために長身選手が揃いにくいなか、グラウンド外での創意工夫をゲームに活かしている。
同大OBの金澤篤ヘッドコーチ(HC)によれば、「僕が選手だった頃もそうでしたけど、ラインアウトのリーダーをする選手が(事前分析の内容を)よく理解して、引っ張っている」。W杯直前まで日本代表に帯同していた卒業生のFL村田毅(現NEC)も、在校中はラインアウトの司令塔だった。下級生時代から試合経験を積むことで、ラストシーズンは身長185センチながら安定したサインコールで信頼されていた。
4年生のLO西出翼が軸をなす現チームの空中戦にあって、貴重な存在となるのがLO佐藤大樹。桐蔭学園出身、身長189センチ、体重102キロの2年生だ。クラブの伝統については「身長で勝てない分、テクニックや飛び上がるスピードで捕っている。それをいつも練習している」と分析し、自らのプレースタイルについては、こんな話をしていた。
「僕は、ディフェンスなど、安定しているところを評価していただいているのだと思います。陰で支えたい方です。自分は」
今季は林雅人アドバイザー(東京ガスHC)の指導のもと、ラインアウト時のムーブ(ジャンパーとリフターが前後に移動する動き)を減らす意識を醸成。ただただ簡潔に、相手よりも素早く飛んでの捕球を目指す。
慶大は加盟する関東大学対抗戦Aでここまで3勝1敗。11月1日には明大とのゲームを控える(東京・秩父宮ラグビー場)。