ラグビーリパブリック

いたずら好きの覚悟…。日本代表ブロードハースト、ブライトンでの気迫の背景

2015.10.30
あきらめない。南アのHOストラウスに必死で食らいつこうとする日本代表FLブロードハースト
(Photo: Getty Images)

 ラグビーワールドカップイングランド大会(W杯)のプールBで3勝を挙げた日本代表において、黒子の働きを示したのがFLマイケル・ブロードハーストである。全試合に先発し、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチからも「仕事量が驚くように素晴らしかった」と褒められた。ニュージーランド代表経験を持つLO/FLジェームズを弟に持つ身長196センチ、体重111キロの28歳は、献身の人で知られている。

 この人の国内所属先であるリコーのチームメイト、WTB小松大祐は、「波がない。常に自分にとってのいいプレーができる」と盟友を語る。ニュージーランド代表のマア・ノヌーら各国のビッグネームが相次ぎ加入するチームにあって、2010年入部の愛称「マイキー」への信頼は揺るがなかった。

 国内最高峰トップリーグ(TL)の外国人枠は「グラウンド上に最大2名」。そんななか小松は、「メンバーを決めるのはその時々の監督だけど、選手はマイキーがいた方がディフェンス面で安心できると思っているはず」と言い切る。ともにプレーしたなかで生まれた信頼関係から、こう話すのだ。

「練習も真面目で、試合中もさぼることなく…。特に、ピンチの時のディフェンス。何だかんだで、『あそこのエリアはマイキーがいるから大丈夫。止めてくれる』と頼ってしまうことがある」

 ジャパンでの「マイキー」は、オープンサイドFLというポジションを任される。グラウンドを常に駆け回り、接点に飛び込む黒子役だ。守備網の綻びを埋めながらのタックル、相手ボールの肉弾戦へのプレッシャーなどを通し、周りの選手の動きを円滑化させた。W杯でも中3日という過密日程下でおこなわれた初戦と第2戦に、フル出場を果たしている。

 普段は仲間のスパイクを本来の置き場と別のところへ隠すなど、茶目っ気のあるいたずらをするようだ。チームの会合では率先してふざけ、周りを盛り上げる。

 しかし、9月19日。ブライトンコミュニティースタジアムで南アフリカ代表との初戦を控えるFLブロードハーストの顔つきをテレビで観て、小松はこう思ったという。

「僕がそこにいても、多分、声をかけられないだろうな」

 キックオフ。序盤から自陣に押し込まれたが、ジャパンは鋭く前に出る守備を遂行。背番号7をつけた「マイキー」も、相手のサポートが遅れた接点へ身体をねじ込ませた。懸命にタックルした。34-32。数日後、こう言葉を絞った。

「こういうチャレンジは人生で1回きりかもしれない。無駄にしたくない、だから身体を張りたいと思っています」

 リコーでは主将も経験した小松は、「外国人選手で尊敬できるのは、さぼらない人」。ジャパンの名脇役をいまでも信頼する。11月14日に東京・秩父宮ラグビー場でのTL開幕節(対 NTTコミュニケーションズ)を見据える。

(文:向 風見也)
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