ラグビーワールドカップで12年ぶりのライバル対決を制し、決勝進出を決めたのはニュージーランド代表(オールブラックス)だった。10月24日、英国・トゥイッケナムスタジアムでおこなわれた準決勝第1試合で南アフリカ代表(スプリングボックス)と激突し、20-18で死闘を制した。ニュージーランドは2大会連続の決勝進出となり、史上初の大会連覇に王手をかけた。
ワールドカップでは4度目の対決だったが、両チームのテストマッチとしては91試合目。世界の最高峰でしのぎを削ってきた好敵手と、ハイレベルなラグビーを繰り広げた。
前半は南アがペースをつかみ、序盤にPGで先制した。
5分過ぎにニュージーランドが攻め上がり、FLリッチー・マコウ主将からの山なりのパスを受けたFLジェローム・カイノが右隅にトライを決めて逆転したが、南アは大崩れしなかった。SHフーリー・デュプレア主将のボックスキックとWTBブライアン・ハバナの卓越したハイボールキャッチで黒衣の男たちにプレッシャーをかけ、FWはブレイクダウンで奮闘、堅守は最後まで続いた。
トライを奪うことはできなかった南アだが、SOハンドレ・ポラードの正確なゴールキックで逆転した。ニュージーランドは前半だけで9つの反則。39分にはFLカイノがイエローカードをもらい、流れは南アだった。前半終了前にもポラードがショットを決め、7-12と南アのリードで折り返した。
しかしハーフタイムでニュージーランドはやるべきことを再確認し、自らの手でチームを立て直す。スティーヴ・ハンセン ヘッドコーチが「待ちの姿勢ではなく、こちらから仕掛けていかなければならない。冷静さを保ち、(後半)最初の10分間をものにするように」と話をし、選手はその通りに遂行した。
14人で後半を迎えたオールブラックスだったが、46分(後半6分)、SOダン・カーターがドロップゴールを決め、2点差に詰める。
そして51分、前王者はゴール前でアドバンテージをもらい、左へ大きく振り、途中出場でFBに入ったボーデン・バレットが貴重な逆転トライを挙げた。タッチライン付近からのコンバージョンをSOカーターが決め、17-12。前半は規律がよかった南アだが、WTBハバナがシンビンとなるなど徐々に反則が出て、流れは変わった。
この試合、何本もラインアウトをスチールされた南アだったが、スクラムは優勢で、57分にPGチャンスを得て17-15とする。
しかしリスタート直後、南アのLOエベン・エツベスが反則でニュージーランドにショットチャンスを与え、20-15と再びリードが広がった。
63分、南アにとって痛いミスが起きる。敵陣でPGチャンスを得たかに思われたが、LOルード・デヤハーに替わってフィールドに入ったばかりのベテランLOヴィクター・マットフィールドが密集の格闘で相手選手に反則行為をしたことがのちに確認され、ペナルティはリバースとなった。
それでも、執念を見せる南アは68分にモールでPGチャンスを得て、途中出場のSOパット・ランビーが成功、20-18とする。
雨でコンディションが悪くなり、1つのミスが命取りとなるシーソーゲーム。
69分、落球から南アにカウンターアタックを仕掛けられ、ヒヤリとしたオールブラックスだったが、キックチェイスで辛うじてボールを外に蹴り出し、失点を免れた。
70分、南アが敵陣22メートル内でラインアウトをするも、うまく攻撃につながらない。72分にもニュージーランドのLOサム・ホワイトロックが相手ボールラインアウトをスチールし、南アの流れを止めた。
終盤、ニュージーランドのセットピースで刻々と時間が過ぎる。経験豊富な最強の黒衣軍は敵陣で手堅くゲームを進め、時間を稼いだ。
79分、ニュージーランドのFLサム・ケインが落球し、南アにラストチャンスが訪れる。自陣深くでボールを回し、突破口を探すグリーン&ゴールドジャージーの男たち。しかし、オールブラックスが懸命に守り、最後は南アのマットフィールドがダブルタックルを受けてボールを落とし、激闘の終わりを告げる笛が鳴った。
「とても落胆している。受け入れるのが難しい。わずか2点差だ」。敗れた南アのデュプレア主将は悔しさを隠せなかった。「相手は私たちにプレッシャーを掛け続け、自陣から出るのに苦労した。(ニュージーランドが14人になった時間帯があったが)残念なことに優位な立場を生かせなかった。しかし、オールブラックスを賞賛すべきだ。彼らがいい戦いをしたのだ」。
勝ったマコウ主将も相手を称えた。
「前半の終盤をみればわかるように、スプリングボックスは統制の取れた戦いをして自分たちの流れをつかんでいた。(リードを許して後半に入ったが)古くからの敵で、すべてをかけ試合に臨んでくる相手との戦い。こちらも結果を手にするためにすべてを出し切った」。
ワールドカップで2大会連続4度目の決勝進出となったニュージーランドのハンセン ヘッドコーチも、試合後の会見の冒頭で「まず南アフリカを称えたい。このような試合をし、どちらかが敗退しなくてはならないのは非常に残念だ。どっちが勝ってもおかしくないゲームだった」と振り返った。そして、決勝の相手がオーストラリアかアルゼンチンのどちらになろうと気にしないと言った。集中するのは自分たちのことだけだ。
「我々には、おそらく史上最高の選手であるキャプテン(マコウ)がいる。彼は偉大なスキッパーでもある。2007年(ワールドカップ準々決勝敗退)、彼はたくさんの批判を受け、傷ついた。しかし彼は成長し、さらに我々はフィールド上に信念を持つリーダーシップグループを持っている。彼らの経験も今夜の試合では大きかった。チームの31人全員がやるべきことをやって達成できる結果。15人や23人が大事だとか考えていると墓穴を掘ることになる」