4年に1度行われるラグビーワールドカップのイングランド大会。プールBで3勝を挙げた日本代表にあって、HO堀江翔太副将は、「どうしたらもっと強くなれるのかを選手が考える。そこが大事」と連呼してきた。
10月11日、グロスターはキングスホルムスタジアム。アメリカ代表とのプール最終戦の前半28分だ。連続攻撃のさなかにモールを作って押し切り、WTB藤田慶和がトライを挙げる。直後のFB五郎丸歩のコンバージョン成功もあり、チームは14-8と勝ち越しに成功する。結局、28-18で戦い終えた。
ラインアウトを起点に組むモールは鍛錬してきたものの、この日の得点の形は「練習は、してないっすね」とHO堀江。もっとも「練習していない」というプレーが自然発生した様子には、確かな手応えを感じたという。
「誰か(ボールを持った選手とその近くの選手)が立った。そこに周りが反応してやった、ってことじゃないですか。1人の反応に全員が反応したことは、よかったと思います」
自身初出場だった2011年は、未勝利に終わった。当時を振り返れば、チーム内での信頼関係のかすかな欠如が口をついたものだ。同じ失敗は繰り返したくない。エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ体制4年目の現チームでも、「僕自身はよく話そう、とか、考えよう、とか、言ってきていた」という。
「うまいこと、リーダーとスタッフがコミュニケーションを取って、スタッフのやりたいことをリーダーが率先してやっていくようになった。自然と、という感じです。ディフェンスでは、ちょっと、僕の考えというか…そういうのが入った。大きくミーティングせず、グラウンドで話しながらやっていった。それがうまいことハマった」
2013、14年と南半球最高峰スーパーラグビーのレベルズ(オーストラリア)に加入した折は、控え選手のモチベーションの維持が大事だと再確認。「皆、集中していてもミスすることはあるんでね…。それよりも『いまのはいいデコイ(おとりの動き)だった』とか、いいプレーを褒めるようにした方がいい」という感覚を、国内所属先のパナソニックでの主将業にも活かしてきた。
「ミスよりも、ミスをカバーしなかった選手がいた場合はちゃんと言おう(注意しよう)かな、と。個人のミスは、チームで隠せるものなんで」
ジャパンでの「ずっと、話そうとはしてきた」という意識は、これらの経験とも無縁ではあるまい。皆で話し合う。チームの戦略術への理解の深さや質を統一する。結果、とっさの出来事に反応できる…。HO堀江のラグビーの捉え方は、あのモールにも確かに落とし込まれていた。
「久々にゆっくりできた。ここ何日間かは、試合がおわっても興奮して眠れなかったんですけど、今回はぐっすり眠れましたね。監督から与えられたチーム戦術、戦略を選手が100パーセント理解して、実行する。それにプラスアルファして、どうしたらその戦術、戦略をよくできるのか、どうしたらもっと強くなれるのかを考える。そこが大切なんじゃないですかね」
アメリカ代表戦の翌日にこう語っていたHO堀江。いまは国内でのテレビ出演や休息に時間を割くが、間もなくグラウンドへ戻るだろう。