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情熱的な南米の男たちが2007年大会以来の準決勝進出だ。10月18日、ウェールズのカーディフ(ミレニアムスタジアム)でラグビーワールドカップの準々決勝第3試合がおこなわれ、アルゼンチン代表がアイルランド代表を43-20で下した。2012年から南半球4か国対抗戦(ラグビーチャンピオンシップ)に参加し、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカというビッグ3にもまれてきたアルゼンチンは、序盤からハングリーに挑んで勢いに乗り、速さ、強さ、創造性、集中力などあらゆるものを発揮して勝利をつかんだ。
一方、欧州6か国対抗戦(シックスネーションズ)で連覇を遂げ、世界ランキングは一時2位まで上昇、今大会で優勝候補のひとつに挙がっていたアイルランドだが、またしても4強入りへの壁を突破することはできなかった。プールステージのフランス戦で太もも裏を負傷した闘将、LOポール・オコンネルの離脱が響いた。先発予定だった司令塔のジョニー・セクストンも痛めた脚の付け根部分はプレーできるほどには回復せず、スタンドからの観戦となった。FLピーター・オマホニーとCTBジャレッド・ペインも怪我で欠場となり、ハードワーカーのFLショーン・オブライエンは前の試合でラフプレーをしたため出場停止処分を受け、準々決勝の舞台には立てなかったのだ。
最初に歓喜の大合唱をできたのはアルゼンチンサポーターだった。
前半3分、FBホアキン・トルクレットのハイパントキャッチから攻撃チャンスとなり、FLパブロ・マテーラの力強い突進のあと右へ展開、外でボールをもらったCTBマティアス・モローニがタッチライン沿いを駆け抜け先制した。
10分にはWTBサンティアゴ・コルデーロが絶妙なキックをインゴールに転がし、いちはやく反応したWTBフアン・イモフが押さえて連続トライとなった。
受け身となったアイルランドは、オコンネルに代わって主将を任されたNO8ジェイミー・ヒースリップが魂のこもったタックルで仲間を鼓舞するが、スクラム、ブレイクダウンなどはアルゼンチンが優勢で、PGを追加され、試合開始から15分も経たぬ間に17-0となる。
ディフェンスもハードだったアルゼンチンだが、17分、PRラミロ・エレーラが危険なタックルでイエローカードをもらい、流れが変わりかけた。
互いにPGを1本ずつ決め、20-3で迎えた26分、アイルランドは勇敢にボールを確保して左につなぎ、途中出場のWTBルーク・フィッツジェラルドが敵陣10メートル手前から鋭いステップとスピードでゴールまで走り切った。20-10、アイルランドが活気を取り戻す。
後半の立ち上がりもアイルランドは勢いがあった。44分(後半4分)、ラインアウトからのアタックでWTBフィッツジェラルドがブレイクスルー、オフロードでFLジョルディ・マーフィーにつないでトライが生まれた。キック成功で3点差となる。
地上での激しいボール争奪戦が繰り広げられた。どちらも恐れ知らず、頭から突っ込む。プレッシャーも凄まじい。
互いにPGで加点し、23-20。そして次第に、アルゼンチンの反則が増えてきた。
60分、アイルランドにPGチャンスが訪れたが、キッカーのSOイアン・マディガンは決めきれなかった。同点ならず。
逆に63分、アルゼンチンはショットで3点を加え、26-20となった。
ラスト15分の勝負。プレッシャーがかかるアイルランドにミスが続いた。SOマディガンがタッチキックを失敗。SHコナー・マレーはスクラムからの球出しの際にノックオン。流れを悪くした。
そして、69分だった。22メートル内に入ったアルゼンチンが左へ大きく展開、FBトルクレットがタックルを受けながらもインゴール左隅に押さえ、大きな得点が入った。コンバージョン成功で13点差。
南米の雄はさらに72分、FLフアン・フェルナンデス=ロべが抜け出してWTBイモフにつなぎ、トライが決まって勝負あり。
この日2トライを挙げて勝利に貢献したアルゼンチン代表のイモフは、「とても厳しい試合だった。この勝利を手にするために練習に励んできた。われわれは攻撃力があってうまくアタックすることができるチームだが、きょうの試合は守備が結果を左右した」と喜びをかみしめた。
敗れたアイルランド代表のジョー・シュミット ヘッドコーチは、「アルゼンチンのパフォーマンスに敬意を表するしかない。パワーとスピードがあって、ボールの競り合いで勝つことが非常に難しかった」と語った。