いまや、引っ張りだこだ。4年に1度のワールドカップで3勝を挙げたラグビー日本代表が13日にイングランドから帰国するや、副将のFB五郎丸歩は本拠地・静岡に帰らず東京でテレビ出演を重ねている。
29歳にして初舞台。今大会4試合で計58点、ペナルティゴール成功数は大会暫定1位の13本をそれぞれ記録した。相手から中核の1人としてマークされる気分を「楽しんでます」と表現したこともある。
「シンプルに言えば、最高です。歩いている方が日本のバスに手を振る。街に出れば写真を撮ってくれと言われる。いままでなかったことですし、海外の方にそう言ってもらえるのは嬉しいです」
10月11日、3勝目を挙げたアメリカ代表戦(グロスター・キングスホルムスタジアム/○28-18)後は人目をはばからず涙を流した。達成感からでも満足感からでも、なかった。思いを吐露し、この先への警鐘も忘れない。
「悔しいですね。ベスト8が目標だったので。何とも言えない、曇り空のようでした。3勝はしましたけど、我々の目標を達成できなかったという…。世界で勝つのは簡単じゃない。3勝したから次はベスト8…というのは甘い考えです」
期間中、「ラグビーにヒーローはいない」と連呼した。ゴールキックについても、「皆、1人ひとり仕事を全う」する延長線上で蹴っていると強調する。画面に映らない場所では、度重なる質問に一言で返事をすることも少なくなかった。
もっとも、このチームの軸だった事実は変わらない。9月23日、キングスホルムスタジアムでのスコットランド代表戦(●10-45)。前半終了間際に自陣ゴール前で相手の連続攻撃を断ったタックルを、「直前にペナルティゴールを外して、少し流れが悪かった。ここで得点されるわけにはいかなかった。リーダーとして身体を張れたことは誇りに思います」と振り返っていた。