エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ率いる日本代表が、くたくたになって、そして笑顔と涙で戦いを終えた。
ラグビーワールドカップ2015のプールステージ最終戦として、10月11日に英国・グロスター(キングスホルムスタジアム)でアメリカ代表と対戦し、28-18で勝利。ベスト8入りには惜しくも届かなかったが、ワールドカップで3勝1敗(勝点12)。ラグビー史に輝く大きな歴史を作った。
今大会のプールステージの主役は間違いなく日本だった。桜ジャージーの男たちは過去、ワールドカップで1勝しかできていなかったが、「世界を驚かす」と臨んだ大会で、初戦で優勝候補の南アフリカを倒すという世紀の番狂わせを起こし、スコットランドには敗れたものの、再び立ち上がって難敵サモアから2勝目を奪った。そして、長年のライバルであるアメリカとの対戦も死闘だった。
「ニッポン、ニッポン!」の大合唱と同じくらい、「USA、USA!」コールも大きかった。今大会初勝利をめざすアメリカも、必死だった。
キックオフ、日本はボール確保に失敗した。序盤はアメリカに主導権を握られ、PGで先制される。
しかし6分だった、SO小野晃征が自陣から抜け出し、キックボールをチェイスしたWTB藤田慶和が確保。サポートも速く、すばやく左へ展開し、WTB松島幸太朗がトライを決めた。FB五郎丸歩のキックも成功で7-3となる。
スローフォワードを繰り返したアメリカだが、アグレッシブだった。19分、アメリカはPGではなくラインアウトモールを狙う。ここでは落球で好機を逃したが、その後も敵陣で攻め続け、24分、WTBタクズワ・ングウェニアへロングパスを通し、トライ。日本は逆転された。
しかし、流れは変わらなかった。リスタート、ルーズボールを藤田が確保してジャパンが活気づく。攻め込む。ゴール前で押したモールはライン手前で止められたが、密集から抜けてインゴールに飛び込む男がいた。藤田だった。22歳の若者が、ワールドカップ初出場で初トライを決めた。14-8。
その後、日本はPGで追加点を奪い17-8とする。
前半終了前、アメリカがゴール前でプレッシャーをかけたが、日本、耐えた。
9点リードでハーフタイム。
後半早々、日本は五郎丸のショットで追加点を奪った。アメリカも55分にPG成功。20-11。
57分、右タッチライン沿いを猛スピードで駆け上がるアメリカのWTBングウェニアを途中出場NO8アマナキ・レレイ・マフィが必死に止める。
60分、今度は守る側になったアメリカのPRエリック・フライがイエローカードをもらった。ここで日本はラインアウトを選択する。モール前進からNO8マフィが抜け出し、ゴールに飛び込んだ。25-11。
しかし、アメリカはしぶとかった。71分、パワフルランナーの突破を機にゴールに迫り、主将のFBクリス・ワイルスがフィニッシュした。キック成功、25-18。
残り時間、フィールドの誰もがすべてをぶつける。
そして77分、日本はPGチャンスをつかむ。これを五郎丸がきっちり決め、最後のスコアラーとなったのだった。
会場を満員にした1万4517人が両チームに万雷の拍手を送る。大仕事をやってのけた桜のジャージーの男たち。アメリカ代表も勇敢だった。最高のラグビーを見せてくれた。
かつてエディー・ジョーンズ ヘッドコーチは「世界から尊敬されるチームになりたい」と言ったが、それは現実となったはずだ。日本でも、声を枯らしたラグビーファンがいた。今大会で初めてラグビーに興味を持ち勇敢なジャパンチームに心を揺さぶられた人も、驚き興奮した人々も、世界中に大勢いたことだろう。
ラグビー日本代表は本当にやったのだ。大きな歴史を作った。
おめでとう! そして、すばらしい戦いをありがとう。