ラグビーリパブリック

先のことは、いまは考えない。SH田中、予選プール最終戦に向け「大丈夫」。

2015.10.07
テレビカメラに向かってポーズをとる田中史朗(撮影:早浪章弘)

 拳で胸を叩き、腕と人差し指を伸ばす。「アメリカ戦、皆のハートを打ち抜きます」。仲間の力を借りて自らの『twitter』にアップさせた動画と同じ動きを、テレビカメラの前でさせられた。恥ずかしがりながらも、日本代表のSH田中史朗はしみじみと言った。自身の行動へのファンの反応についてだ。

「すごくありがたいですし、コメントをもらうことで日本代表としての誇りを思い返せるので、いい刺激になっています」

 9月から4年に1度あるワールドカップ(W杯)に出場中だ。自身2度目の参戦となる今度のイングランド大会では、現在、予選プールBで3戦中2勝1敗。9月19日、ブライトン・コミュニティースタジアムでは過去優勝2回の南アフリカ代表に勝った。

 2011年のニュージーランド大会では、1勝も挙げられず罪悪感にさいなまれた。2013年からニュージーランドのハイランダーズ入り。国内競技のレベルアップのきっかけを掴むべく、南半球最高峰のスーパーラグビーに日本人として初めて挑戦した。身長166センチ、体重75キロの騎士は「日本ラグビーを盛り上げる」という使命感を抱いてきた。イングランド大会の結果に伴う注目度の上昇に、安堵しているのだ。

「これからは、個人のことを優先させたいかなと思います。ラグビーは盛り上がっている。いままでは日本ラグビーのために…とやってきたけど、個人にフォーカスを置いてやっていきたいです。ゆっくりできる部分があるので、もうちょっとレベルアップというか、このレベルを下げないということはできる」

 10月5日、チームはウォリックで練習。11日のグロスター・キングスホルムスタジアムでのアメリカ代表戦に向け、戦術の微調整に取り組んだ。「ミスがあったり、やろうとしていることができなかったり…。試合に勝った翌週のきょうみたいな日は、やっぱり、落ちる部分もあるのかなと僕自身は感じる。ここは、日本ラグビーがもっと成長できる点」と指摘しながら、「試合直前になれば集中してくれる。大丈夫です」とも続ける。

 言葉通り、「皆のハート」を打ち抜けるか。展望を語る。

「あまり考え過ぎると皆が緊張してしまうので、いつもと同じように『この試合にすべてを賭ける』という思いでやっていきたいです。僕もいつも通り。パスを出して味方を(相手の背後のスペースへ)抜けさせたり、裏のスペースを見てキックを蹴る。あとはコミュニケーションをしっかり取る」

(文:向 風見也)
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