ラグビーリパブリック

ラグビー愛50年。カーディフ近郊「The Grogg Shop」の魅力。

2015.10.03
左からグラハム・プライス、ボビー・ウィンザー、チャーリー・フォークナー。
最強時代のウエールズのフロントロー。

 カーディフ(ウエールズの首都)のセントラル駅からローカル線の電車で30分弱。タフフォレストという駅に世界中のラグビーファンが一度は訪れたいショップがある。
 駅前にたたずむ警察官に尋ねれば、すぐに笑顔になる。
「おお、グロッグス(The Grogg Shop)。この橋を渡って駅の逆サイドへ。左にまっすぐ歩いて行けば、やがて見えてくるよ」
 入り口に置かれた記帳ノートに、世界各地から訪れた人たちが名前を記していた。ワールドカップ開催中だから、特に訪問者が多い。日本からのファンの名前もいくつかあった。

『Groggs』は1965年にジョン・ヒューズがこの地で起こしたラグビー人形の老舗だ。粘土でラグビー選手の人形を作り、焼き上げ、色付けしたものが店内いっぱいに飾られている。どの人形も、その選手の特徴をよくとらえており味わい深い。
 往年の名選手。最近のスター。ウエールズ代表のものはもちろん、時代を超えて世界各国の名選手のものを作り、他のスポーツの選手や著名歌手などのものもある。ちなみに、日本代表選手のものは過去に松尾雄治さん(SO/元新日鐵釜石)のものがあるだけだ。

2代目のリチャード・ヒューズさん

 家族経営で創業50周年を迎えた同店。現在、人形作りをおこなっているのはジョンの息子、2代目のリチャードさんだ。ショップ奥の工房で、人形作りを進めながらにこやかに話す。
「これまでにいくつの人形を作ったか、とよく問われるんだけど、本当に分からないんだ。幼い頃に父の真似事で作ったものに始まり、世界中に私の作ったものが出て行った。その数は…本当に分からないくらいの多さなんだ。
 今朝も日本のテレビ局の取材が来たよ。それで、マツオさんの人形はないか、と。残念ながら、もうないんだ。ほら、あそこにあるのは(元ウエールズ代表の)シェーン・ウィリアムズの作りかけ。日本でもプレーしたから知ってるよね。あとは色付けするだけだ」
 作業台の傍らには、三菱重工相模原時代の写真が置いてあった。「この頃はヒゲもじゃだね」と笑った。

 グロッグス人形のモデルになることは一流選手の証でもある。だから昔から、モデルになった選手たちは自分の人形と写真を撮ることに気さくに応じ、人形にサインを入れ、記念のジャージー等をショップに贈ってきた。それらは店内のあちこちに飾られ、ファンにとってはたまらない空間。古い名作がまとめて置かれたミュージアムもある。ラグビーファンなら、カーディフでの観戦時に寄るべきスポットのひとつだろう。

 リチャードさんは「2019年のワールドカップのときには日本に行ってみたいんだ」と言った。
「(今回のワールドカップで勝利した)南アフリカ戦のジャパンは凄かったね。1975年にウエールズが日本に遠征したときは大勝したけど、もっとも最近の対戦(2013年)ではジャパンが勝っているんだから、尊敬するよ。この店にも、何人かの日本代表選手が来たことがあるよ。ほら、あそこ」
 来訪者が名前を書き込んだ壁に「藤掛三男」の名があった。元日本代表CTBで現在は佐野日大高校ラグビー部監督。1993年のウエールズ遠征時に寄り、書いたのだろうか。
 店内の会計場所の机には、お客さんに向けての貼り紙がしてあった。
「10月1日はミレニアムスタジアムでウエールズvsフィジーがおこなわれるため、いつもより早く、16:30で店じまいします」
 ラグビーを愛する家族が、ラグビー愛好者のために開いた愛すべきお店である。

ウエールズだけでなく、各国の著名ラグビーマンたちのものがある

http://www.groggs.co.uk/default.aspx

【The Groggshop】
Treforest, Pontypridd, R.C.T, South Wales, CF37 1BH.
Opening Hours
Monday to Friday : 9am-5pm

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