(撮影/早浪章弘)
9月28日の朝。練習前にエディー・ジョーンズが強い口調で怒鳴ったという。FLリーチ マイケル主将は振り返った。
「これまで南アフリカ代表とやった後も、スコットランド代表とやった後も、切り替えよう、切り替えよう、と言っていた。ただ、何人かが切り替えられてなかったから…。その雰囲気を見て、エディーが『集中しろ』と」
チームは生き物だ。ラグビー日本代表は、9月19日、ブライトン・コミュニティスタジアムでのラグビーワールドカップ(W杯)イングランド大会・予選プールB初戦で過去優勝2回の南アフリカ代表を34-32で撃破。23日、グロスター・キングスホルムスタジアムでの第2戦ではスコットランド代表に10-45と敗れたが、かすかに最初の金星に酔う匂いがあったと、指揮官は感じたのだろう。
10月1日、合宿地であるウォリックでの取材エリア。FLリーチ主将は、一喝とその後の変化を明かした。
「それまではまだ南アフリカ代表戦の話題も出ていた。ただ、そのことがあってからは話す内容がサモア代表戦のことだけになった。次の試合がどれだけ大事か。1人ひとりがわかって、集中しています」
10月3日には第3戦に挑む。ミルトンキーンズ・スタジアムmkでサモア代表とぶつかる。フィジカルの強さに自信を持つ相手を向こうに、「我慢です。こちらが焦っていつもやらないプレーをしてしまったら、一気に崩れてしまう。耐えて、耐えて…」と主将は意気込む。実は、1日の練習でもFLマイケル・ブロードハーストによれば「気負いでしょうか。意気込みはあったのですが、ディフェンスのところでエラーがあった」。ただ、その空気を察したFLリーチが皆をまとめ、こんな話をしていたようだ。
「試合でも、こういうことは起こる。ちょっと、落ち着こう」
FLブロードハーストの述懐について、FLリーチ主将本人は言う。
「今日の練習も入り(序盤)はよくなかったけど、練習の時に失敗をして『次は…(気を付けよう)』と気持ちを持って行くことはできた。状態はいいです」
準々決勝進出に向け、負けられない一戦を真っ直ぐに見据える。かねて「日本ラグビーを変えられるのは俺たちしかいない」と宣言してきたW杯出場2度目のリーダーは、こう言い切った。
「チームは4年前(前回のニュージーランド大会)の時に比べたらいい。あちこち、痛いところはあるけど、大きなケガ人はいない。常にディシプリンとハードワークを。この2つが重要。自分の身体を犠牲にしないといけない」
相手のキーマンのSOトゥシ・ピシやFBティム・ナナイ・ウィリアムズにも、各所でプレッシャーをかけるという。例えば、ボールが渡る前から名前を呼んでいらつかせたり。
「とても重要な試合です。代表が立ち上がった頃からベスト8を目指してきた。この試合に勝たないと目標を達成できない。ただ、勝つことにフォーカスし過ぎず、やるべきことをやる。結果、勝ったら次の試合へのメンタルづくりもしやすくなるし、目標にも近づく」
SO小野晃征やWTB山田章仁といった、南アフリカ代表戦で活躍したメンバーも故障などから復帰する。37歳のLO大野均は、日本代表のW杯最年長出場記録を塗り替える予定だ。それぞれがそれぞれの思いを持って臨む日本ラグビー界きっての大一番は、日本時間で10月3日の22時30分、キックオフ。