マイケル・ブロードハースト。日本代表の3列にはこの男もいる(撮影:早浪章弘)
ラグビー日本代表は、ワールドカップ(W杯)のイングランド大会の初戦を19日に控える。ブライトンで南アフリカ代表とぶつかる。17日には試合登録メンバーを発表。「やっと、ここに来れた」。意気込むのは、ジャパンで22キャップ(国同士の真剣勝負への出場数)を積み重ねてきたFLマイケル・ブロードハーストだ。黒子の動きで仲間を支える。
「タフですよ。本当に、休まない」とは、所属先のリコーのチームメイトの弁である。2009年に来日した愛称「マイキー」は、クボタ、リコーと渡り歩き、12年秋から現体制下のジャパンに参加。身長196センチ、体重111キロの体躯を密集戦に投げ出し、勘所を得た動きで守備網の綻びを縫う。
14年春には、出産を控えた妻との暮らしを最優先すべく代表を離れた。復帰したのは、W杯イヤーの15年春である。家族最優先の倫理観を持ちながらも、いまは、ラグビーマンとしての本能に従う。
「(離脱時は)奥さんが自分を必要としていました。エディー(ジョーンズ ヘッドコーチ)さんは『いつでも戻っておいで』と寛大な心で言ってくれました。代表には秋に戻るつもりが、その時も怪我をしてしまった…。いま、戻って来れて嬉しいです。ジャパンはいいチームだし、勝てるとも思っています。だからこそ、エディーさんに『また、やりたい』という気持ちを伝えたんです。人生、一度きり。このようなチャンスはもう巡ってこない。最高峰のW杯への挑戦です。遠征などで家族と離れる機会は多かったですが、決断は、簡単でした」
今度の相手である南アフリカ代表は、世界ランク3位のフィジカルチームだ。もっとも「バックローは身体が大きい分、動きが遅いかもしれない。ディフェンスではラインスピードを上げてチョップ(低く鋭い)タックルを決めたい」と、具体的なプランを持って勝利を狙う。
「フィットネス、セットピース強化にも時間をかけてきた。あとは、気合いと身体で戦うだけ。すべてのラックに一番、最初に入ることを意識しています。今回の相手は大きい。低くタックルに入りたい」
弟で、南半球最高峰スーパーラグビーのハリケーンズに所属するLO/FLジェームスは、今季、母国のニュージーランド代表に選出されながらもW杯の登録メンバーからは外れている。兄は「(ニュージーランド代表のライバルである南アフリカ代表を)代わりにやっつけてやります」とも語った。
「当日は、全力を尽くします。日本はW杯出場チームの頭数を埋めるために来ているわけじゃない」