ラグビーリパブリック

居住3年資格も知らなかった!? カーン・ヘスケス、夢にもなかった世界へ。

2015.09.16

陽気な男。迷わず走る。(撮影/松本かおり)

 大きな目をぱちくりさせて言った。
「キツーいことを長くやってきたからね。あれだけの時間を費やし、いろんなものを犠牲にしてメンバーに残れなかったら…悲しかったと思う」
 ワールドカップスコッドに名を連ねた直後、興奮気味にそう話した。日本代表WTBカーン・ヘスケスだ。数年前は考えてもいなかった夢の舞台で大暴れすることを心に誓っている。

 ニュージーランドはネイピア出身。マオリの血を引く陽気な弾丸ランナーだ。ネイピア・ボーイズハイスクール時代はバックローでプレーし、オタゴ大へ進学した。
 地元クラブで活躍し、オタゴ代表に選ばれる。国内州代表選手権で活躍。相手防御へクラッシュし、前へ出る回数では同選手権上位にランクされたこともあるが、キックやパス、ディフェンスについては未開発な部分も多く、それ以上のカテゴリーにはなかなか進めなかった。来日し、宗像サニックスでプレーするようになって今季が6年目。同チームのプレースタイルやトレーニングにフィットして動きの幅は広がったものの、強力なインパクトプレーヤーとしての起用がベストポジションだった。

「実は来日した頃は、3年住んだら日本代表選手としての資格を得られることも知らなかったんだ。よく分かっていなかった」
 そう言って大笑いする男は、ジャパンに招集された後大きく生まれ変わった。昨秋の初キャップ獲得から1年。3部練の日々が短時間限定プレーヤーを変身させた。倒れぬ足腰の強さはそのまま、フィットネスもストレングスも人生最高値を記録する。「強度の高い練習に最初は驚き、キツかったけど、自分が変化していくのがわかった」と言った。
「まさか、自分が80分プレーし続けられるようになるとはね。ビックリだよ。最初は40分間プレーするだけでもキツかった。試合のテンポについていけなかった。そこから始まって、ここまでたどりついた。WTBの競争は激しかったと思うけど、すべてを出し切った思いはあった」

 妻・カーラさんは、女子ニュージーランド代表のWTBとして活躍し、2010年の女子ワールドカップではトライ王に輝いた。同年のIRB(現ワールドラグビー)選出女子最優秀選手でもある快足ランナーは、いまも同国女子セブンズ代表。来年のリオ五輪に向けての活動やトレーニングもあり、今回のワールドカップに応援で駆けつけることは難しそうだという。
「彼女にはいつもいい刺激をもらっている。僕も、今回のチャンスを活かしたい。体も絞れて調子がいいんだ。暴れてくるよ」
 ウルグアイ戦の頃に伸ばしていた髭については、「カラオケでQUEENの歌をうたうため、フレディー・マーキュリーになりきろうと思って」と話した。ジャパンでの活動がオフの期間には、地元・宗像のお気に入りの串焼き店に通い、ファンと気さくに話す。みんな、そんなナイスガイが好きだ。
 夢にもなかった舞台で、いつもの走りと笑顔を披露したい。

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