ラグビーワールドカップで歴史を変える。そう誓ったチームジャパンの気迫が伝わる、国内最後の壮行試合だった。8月29日、東京・秩父宮ラグビー場でウルグアイ代表と対戦し、40-0で快勝した。試合終了の笛が鳴るまで日本代表は果敢に攻め続け、計6トライ。同じく今秋のワールドカップに出場する南米のチャレンジャーには一度もゴールラインを割らせなかった。
「いいパフォーマンスができると思っていた」と日本代表のエディー・ジョーンズ ヘッドコーチ。「火曜日に母から電話があった。『チームが大変ね。試合はどうなるの?』。私は答えた、新聞を信じないでいいよ、と」
自身がワールドカップ後に退任するニュースは世界中で報じられ、大勝負に臨む前の突然の騒動にネガティブな見方をする人もいる。しかし、エディージャパンは集大成となるワールドカップへ向け、しっかり力をつけてきたことを多くのファンの前で示した。
本番まであと3週間。来週月曜日にはワールドカップ最終登録メンバー31名が発表される。「メンバーは、きょうで変わることはない。何か月も前からほぼ決まっていた」と指揮官は試合後に語ったが、この日、出場したジャパンの23人は全力を出し切った。
序盤、ゴールに迫りながらもブレイクダウンでターンオーバーされ、好機を逃した日本だったが、悪い流れにはしなかった。前半12分に先制する。シンビンで1人少なくなったウルグアイのディフェンスを少しずつ後ろに下げ、FLマイケル・ブロードハーストの力強い突進後もよくつないでバックス展開し、FB五郎丸歩がトライを挙げた。
その3分後にはSO小野晃征が追加点。NO8ツイ ヘンドリックが自陣から大きくゲインしてWTB松島幸太朗につなぎ、さらに前進。日本代表選手のサポートは速く、最後は小野がインゴールに飛び込んだ。
ジャパンの勢いは止まらず、25分、サインプレーを使ってWTB福岡堅樹がブレイクスルーし、敵陣深くに入る。すばやく左へ回して、外にいたFLブロードハーストがパワーで押しきった。
21-0で最初の40分を終える。
しかし、ジョーンズ ヘッドコーチは満足していなかった。
「きょうは60点差で勝たないといけなかった。スクラムもラインアウトも良かったし。前半、保守的でした。だから後半は、もっと自信と勇気を持って攻めよう、と」
ハーフタイムに指揮官の言葉を聞いたジャパンの選手は、後半はさらに躍動した。
44分(後半4分)、敵陣深くでの相手ボールラインアウトをFLブロードハーストがスチールしてチャンスとなり、FWがアグレッシブに連続突進してゴールポストに近づく。SH田中史朗はすばやく逆サイドの右へ振り、WTB松島がフィニッシャーとなった。
50分にはFW・BKが一体となってゴールに迫り、軽快なステップで抜けたWTB松島がオフロードでNO8ツイにつなぎ、5点を追加。
そして66分には、先週末に代表デビューしたばかりのPR渡邉隆之がブレイクダウンでボールをもぎ取り、そこからスピードスター福岡のトライが生まれた。
キッカーを務める五郎丸はこの日、ゴールキック6本のうち5本成功しており、彼の右足もまた、ワールドカップでの活躍が期待される好調ぶりだった。
敗れた指揮官、ウルグアイのパブロ・レモイネ ヘッドコーチはゲームへの姿勢が悪かったと語った。「ミスが多すぎた。我々がボールを得ても進め方がうまくいかず、それがディフェンスにも響いた。いま思えば、気持ちの持っていき方から問題があった」。このあとはスペインで15日間、最後の準備をしてから本番に臨む。「気持ちを立て直して戦う。ゲームをリスペクトして、自分たちの絆を深めないと」
一方、日本代表のリーチ マイケル主将はこう振り返る。
「いい準備ができた。セットプレーも、コンビネーションも良かった。ブレイクダウンにもっと激しさを。そのためにはメンタルをチェンジさせないと。一人ひとりのボールキャリーの質が上がったので継続もできた」
ラグビーワールドカップ2015イングランド大会は、9月18日に開幕する。8大会連続8回目の出場となる日本代表はその前に、ジョージア代表と9月5日にテストマッチをしてから本番を迎えるが、日本国内で試合をするのはきょうが最後だった。ワールドカップ後にジャパンから離れるエディー・ジョーンズ ヘッドコーチにはこみ上げるものがあった。
「日本で最後の試合。さびしく思った。4年間やって、楽しかった。ファンはジャージーを着て、ジャパンウェイの旗を持って応援してくれた。誇りを持てるチームになったと思います」