ラグビーワールドカップ関連TV番組の収録に参加した田中史朗(撮影:向 風見也)
ラグビー日本代表で46キャップ(国同士の真剣勝負への出場数)を獲得する田中史朗は、突然、涙ぐんだ。
9日、都内の飲食店。『ラグビーワールドカップ開幕直前 日本代表応援スペシャル!』(16日、BSスカパーで16時50分から放送)の番組収録に参加したときのことだ。プログラムが進むなか、自身初参加となった2011年のワールドカップ(W杯)ニュージーランド大会の映像に目を向ける。司会で実況アナウンサーの矢野武さんから、未勝利に終わった大会の感想を聞かれた。すると、「記憶から消していたので、申し訳ないですけど、覚えていません。VTRも観れないです」。そのまま、嗚咽を漏らす。
「あんだけ皆さんに応援してもらったのに、ああいう結果になってしまって…すみません」
あの日の悔しさが、2012年の海外挑戦につながった。13年には南半球最高峰スーパーラグビーのハイランダーズに加入。同リーグで初の日本人選手として、加入3年目にはチームの優勝も経験した。素直な感情の発露と相まって、いまやジャパンきっての名物選手である。
収録中は今秋のイングランドW杯での対戦相手の印象や、チームメイトの特徴なども語っている。一部報道で「不協和音」と伝えられたエディー・ジョーンズ ヘッドコーチ(HC)とのコミュニケーションについても、「皆が彼に何も言えない部分があったので、僕が皆の代わりに(意見を)言いました。クリアになって、お互いのことを言い合えるようになった」。9月からあるイングランド大会に向け、決意を新たにする。
「結果もそうですけど、僕たちがどう身体を張ったか、その思いを見て欲しい。それを子どもたちに伝えて、子どもたちがまた次の世代へ、と。ラグビーという素晴らしいスポーツを日本に広められるよう、全力で…」
(文:向 風見也)