インターナショナルマッチは何が起こるかわからない。
8月8日、世界ランキング2位の南アフリカ代表が、同8位のアルゼンチン代表に敗れた。テストマッチ20回目の対戦で初黒星。25-37、惨敗だった。集中力を欠いてミスを連発し、気迫でも南米の雄に圧倒され、地元ダーバンのキングスパークに集まったサポーターを失望させた。南アは、今年のラグビーチャンピオンシップ(南半球4か国対抗戦)は3戦全敗となり、最下位に終わった。
ラグビーワールドカップ開幕まであと40日。日本代表が初戦で挑むスプリングボックス(南ア代表)は、ホームでかつてないほどの屈辱を味わったかもしれない。おそらく、ワーストゲームのひとつとして人々の記憶に残るはずだ。
3年前にメンドーサで引き分け、昨年の対戦2試合はどちらも7点差以内の接戦だった。一度も負けたことがない格下が相手とはいえ、もはや余裕をもって戦えるほどの力差はないはずだが、南アは立ち上がりから気迫に欠けていた。
開始2分も経たぬ間に、アルゼンチンがトライを挙げる。ラインアウトからのアタックでWTBフアン・イモフが突破し、CTBマルセロ・ボッシュにつないで先制した。
22分には俊敏なSHトマス・クベリが抜け出してWTBイモフがサポートし、ゴールへ駆けた。
南アがPGで得点を重ねる一方、果敢に攻め続けるアルゼンチンはさらに30分、敵陣22メートルライン内のスクラムで優勢になってショートサイドを攻略し、6-21とリードを広げた。
会場がざわつくなか、南アは35分にラインアウトからLOルーダヴェイク・デヤガーが突進して1トライを返したが、リスタート直後に反則を犯し、流れを変えることはできなかった。粘りのないディフェンスに加え、キックオフの失敗やハンドリングエラーなど、集中力を欠いたプレーを連発したグリーン&ゴールドの男たち。スクラムでも苦戦し、前半終了前にPGを2本決められ、13-27で折り返した。
ハーフタイムを経て、南アに火がつき猛反撃が始まるかと思いきや、後半も主導権を握ったのはアルゼンチンだった。42分(後半2分)、ゴール前でPKを得ると、南アが守備隊形につかぬうちにSOフアン・マルティン・エルナンデスがタップから速攻を仕掛け、WTBイモフがハットトリック達成。ショットも決まり、13-34となった。
まさかの21点ビハインドとなった南アは、少しずつ時間がなくなっていくなか、慌て始める。息が合わずミスを重ね、苛立ちを露わにする者もいた。
49分、ハイボールキャッチからのカウンターでFBヴィリー・ルルーが約50メートルを走り切り、ゴールも決まって14点差にした南アだったが、その後もアルゼンチンの激しいタックルとブレイクダウンに手を焼き、追い上げムードは続かなかった。
62分、初白星へひたむきなアルゼンチンのCTBボッシュがドロップゴールを決めた。17点差。
南アは相変わらず、スクラムでも、リスタートのキックオフでもフラストレーションを溜め、負の連鎖は途中出場選手も断ち切ることはできなかった。
終盤にWTBブライアン・ハバナがトライを決めて12点差にしたものの、時すでに遅し。
現地メディアの報道によると、南ア代表のハイネケ・メイヤー ヘッドコーチは試合後の会見で、失望させた国民に対して謝罪の言葉を口にしたという。この日の歴史的敗戦が今後にどう影響するか……。
“本番前”、南ア代表がおこなうテストマッチはあと1試合。ブエノスアイレスに飛んで、15日にアルゼンチン代表と再戦する。