中央大のプレーメーカー、浜岸峻輝(撮影:松本かおり)
司令塔、モデルチェンジを図る。
関東大学リーグ戦1部で昨季5位だった中大にあって、SO浜岸峻輝がプレーの幅を広げつつある。それまでは得意な左足でのキックを軸にゲームを組み立てていたが、いまは防御網への仕掛けとパスに比重を置く。
6月21日、埼玉・大東大グラウンド。同4位の大東大との点の取り合いを40-39で制した。関東大学春季大会グループB(対抗戦とリーグ戦の、前年度中位陣同士の交流リーグ)で優勝を果たした。
本人は笑う。チーム全体で攻撃への意識を高めているなか、酒井宏之ヘッドコーチも目を細めていた。
「去年まではキックが多かったけど、今年は浜岸自身のレベルが上がっている。トライもしていて、パスも判断もいい」
松田雄監督の母校でもある東京高出身の3年生だ。高校時代からキックとタックルには定評があり、大学ではルーキーイヤーから背番号10に定着。高校日本代表、20歳以下日本代表など、年代別のトップにも選出されてきた。力負けをせぬようじっくりと身体を作り、いまは身長175センチ、体重90キロという体躯でグラウンドに立つ。
比較的、人見知りをするほうだ。かつては「よく言われるんですよ。声出せー、って」と照れたこともあった。もっとも、柔和な笑みに負けん気を宿す。1年時にチームの主将だったCTB山北純嗣(現コカ・コーラ)には、こう評されたものだ。
「普段はふにゃふにゃっとしているけど、(プレース)キックを蹴る時ここを決めてやる、みたいなものは持っています」
自らのスタイルチェンジについては「今年は、アタックです。アタックとフィットネスだけをやっています」と本人。専守防衛型から、スコア獲得のバリエーションを持つクラブへの変貌。その流れにならって、プレー選択の基準を変えているようだ。
大東大戦後、当の本人が穏やかに笑う。張りのある口調ではなくとも、おそらく確かな決意を込めた。
「点の取り合いになることは予想していた。結果、勝ててよかったです。負ける気がしなかった。どんだけ取られても、取れる、と。今年はこういう感じで、頑張っていきます」
大東大戦後の本人の談話である。張りのある口調ではなくとも、おそらく確かな決意がこもっていた。