4年に1度のワールドカップ(イングランド大会)を秋に控える日本代表に、今春、大学3年生の合流が相次いだ。同志社大のWTB松井千士はテストマッチ(国同士の真剣勝負)デビューを飾り、東海大のPR渡邉隆之も練習生として宮崎での合宿に参加している。
そんな流れを受け、早期での代表入りを具体的に目指すようになった別の大学3年生がいる。SH小山大輝。大東大で1年時からレギュラーを獲得した、強気のプレーメーカーだ。昨季までは「いずれ代表に入りたい。いまは焦らず」と話していたのが、「大学生でもできる、そう思えて…」。特に、WTB松井の台頭に心を動かされたようだ。
本格的にラグビーを始めたのは、北海道芦別高。全国レベルでの経験は皆無だったSH小山だが、地域別の選抜合宿で日本協会の中竹竜二コーチングディレクターに「誰より本気だった」と見込まれた。ここから運命を急転させた。3年時、高校日本代表入り。全国高校ラグビーで活躍した茗渓学園のSH大越元気(同志社大3年)らを押しのけた格好だ。当時、抜擢を決めた横田典之監督はこう振り返ったことがある。
「候補合宿で試合形式の練習をしたのですけど、そこですごかった。ディフェンスの時も、ラインアウトの後ろからその逆側のタッチラインあたりまで走って戻ったり…。本当は、SHは他の2人で(事前にほぼ)決まっていたんです。それが、SH小山を『あれ、もう1本見てみようよ』と言ううちに…」
SH小山は大学ラグビー界でも存在感をアピール。20歳以下日本代表は負傷やチーム事情などのため辞退も、キレ味鋭いサイドアタックと強烈なタックルで関係者の耳目を集めた。昨季、大学選手権6連覇を果たした帝京大のSH流大前主将(現サントリー)にも、攻撃力を賞賛された。
ジャパン入りを具体的に目指すようになって迎えた、今季の春季大会。中大との最終戦ではチームの反則の繰り返しによりシンビンを喰らうなどし、「もっと冷静にやれれば。それだけ気持ちが入っていたとも取れるんですけど…」と反省した(6月21日/埼玉・大東大グラウンド/●39-40)。
もっともこの日は、日本最高峰であるトップリーグのある採用担当者から「1人、違う次元でプレーしている」と評されもした。持ち味も発揮している。3フェーズ連続でタックルを繰り出したり、相手が反則すれば速攻を仕掛けまくった。下級生の頃はサイドアタック1本槍の向きもあったが、いまは目の前の敵の状況を観ながらキックなども繰り出す。「FWとの連携がまだまだ」としながら、こう決意を語る。
「練習も、経験も、もっと積んでいきたい。チームにはせっかく、山内さん(智一コーチ)などすばらしい指導者がいる。吸収できるものはどんどん吸収したい。グラウンドに入ったら、目つきを変える。オンとオフをはっきりとする。チームを引っ張る」
国際舞台に挑むうえではフィジカル強化も必須だが、キレを保ちながらのウェイトトレーニングで「(体重は)年々、4キロ増えている」(チーム発表の公式サイズは「身長170センチ、体重67キロ」)。
28日、東京・秩父宮ラグビー場。関東大学オールスターにも「リーグ戦選抜」の一員として出場する。