昨季は関東大学対抗戦Aで3位に終わった明大にあって、「(遅れを)取り戻さなきゃ」と意気込む3年生がいる。FL近藤雅喜。大怪我からの復帰ではなく、復活を目指す。
1年の秋、左膝の前十字靭帯を切った。即、入院。全国的強豪である大阪・東海大仰星高から入った期待の大型バックローだったが、戦線離脱を余儀なくされた。2年夏に復帰も、「痛みが治らず、左足の感覚がない状態で、状態が上がらず…」。ここまで、不完全燃焼である。
しかし今季は、関東大学春季大会で全試合に先発している。対抗戦A、リーグ戦1部の上位陣が集まるグループAではここまで1勝2敗も、背番号「6」のFL近藤は持ち味を発揮。相手ボールの密集への果敢な飛び込みで、攻守逆転を誘発する。身長は188センチ、体重は自己申告で「104か5」キロというサイズも手伝って、国内最高峰であるトップリーグの関係者からも熱視線を浴びる。
「いまはドクター、トレーナーなどいろんな方の力を借りて、ある程度の状態にはなった。気持ちの面でも、3年生として自分からチームを引っ張ろう、と」
背景は他にも、ある。1年時の退院後から、FL近藤は夜な夜な寮の近くのトレーニング室に通った。
「もともと(故障前から)自分の筋力が大学で通用しなくて。パンプアップさせないと、とは思っていたので」
グラウンドの全体練習に戻れぬ鬱憤を、「取りあえず、フィジカルをつけよう」という思いに昇華させた。丹羽政彦監督からも復帰するまでの間に、サイボーグになれ。でかくなろう」と言われてはいた。しかし真に突き動かしたのは、おそらく、自分自身の意志だった。
「一番、きつかった」という復帰後も、日課は続く。実は同学年のFL田中真一も、同じような時期に同じ怪我をしていた。「2人で、今年はやってやろうと話しています」と、FL近藤は笑う。
「手術後2か月間、ラグビーができない時間が続いた。ラグビーをしている仲間がうらやましくて。夜、ウェート(トレーニング)をガンガン。全体練習の時はリハビリをして、チームのウェートセッションでウェートして、夜もまたウェートを…。戦力の外にいたのが、本当に、悔しくて。もっと、組織の力になれたら」
OBで元サントリーの元申騎コーチは、「まだ全てが弱い。チューンアップしないと」と手厳しい。むしろ本人は、その辛口な評価を受け入れている。
「元さんに言われるのは、ブレイクダウン(ボール争奪局面)の細かなところ。帝京大は、そこを制することで頭1つも、2つも抜けてしまっていると思う。テクニック、気持ちも、まだまだ。下を向くことはないんですけど、まだまだです」
14日、静岡・県営草薙競技場。その帝京大(対抗戦A・昨季1位)と激突する。大学選手権6連覇中の相手に、真っ向からぶつかる。