(撮影:早浪章弘)
女子15人制日本代表“サクラフィフティーン”が歴史的勝利を遂げた。
5月9日、福岡・レベルファイブスタジアム。過去7回対戦して一度も勝ったことがなかったカザフスタン代表を27-12で下した。6大会連続ワールドカップ出場のアジア女子最強チームに対し、日本は序盤から敵陣で攻め続けた。アタックではゲインラインを切る。ディフェンスは前でプレッシャーをかける。キックでエリアを取る。ゲームプランどおり、『前でやるラグビー』を最後まで遂行し、勝利をつかんだ。
キャプテンのFB田坂藍やCTB冨田真紀子などが激しいタックルを連発し、37歳のベテランLO乾あゆみが体を張った。18歳のSO山本実は初キャップながらバックスリーダーに指名され、的確にキックを使ってゲームを優位に進めた。6-0で迎えた前半終盤の連続トライは俊敏なSH井上愛美が演出したものだ。複雑なことは考えず、基本的なプレーをしっかりやり続けた。後半は途中出場選手も躍動し、歓喜の瞬間を迎えた。
オリンピック競技となったセブンズ(7人制ラグビー)と比べ、女子の場合は15人制の選手を代表活動以外で強化できる環境がまだ十分には整っていない。それでも、2017年の女子ワールドカップを見据える有水剛志ヘッドコーチは、7人制と15人制のリソースを最大限に有効活用するというテーマを持ってチームを作ってきた。セブンズ選手を15人制でも活かすのはもちろんのこと、スタッフも、セブンズスタッフと15人制のスタッフが相乗効果を生むために連携して強化を進めている。
男子の高校生やクラブチームを相手に練習したことも結果に結びついた。
「カザフスタンは歯が立たない相手と思っていましたが、私たちはカザフスタンより速さや強さがある男子を相手に練習してきたので、実際にやってみて『あっ、いけるかもしれない』という気持ちをみんな持ったと思います。今日勝ったことで、『もっと上に行けるんじゃないか』という自信になりました」(田坂キャプテン)
女子カザフスタン代表の副将、スベトラーナ・クルチニコワは、昨年戦った日本チームには若さを感じたが、今回は非常に成熟したチームになっていて、日本選手の成長に驚いたという。
「日本がここ数年、私たちを倒そうと努力をしていることはわかっていた。私たちはこれまで、ワールドカップ予選を含めてそれを阻止してきたが、今日はそれができなかった。日本の選手たちはスカートをはいたサムライのような意気込みで今日の試合に向かってきた」
過去7戦全敗。2006、2010、2014年のワールドカップアジア予選で、日本の前に立ちはだかったのはいつもカザフスタンだった。そして、今回の対戦は初めてのホームゲーム。サクラフィフティーンの選手たちは絶対に勝ちたかった。
20歳からラグビーを始め、23歳で女子日本代表になり、代表歴7年間でワールドカップ予選を過去2大会経験しているPR伊藤真葵は、感慨深くこの日の勝利をかみしめていた。
「やはり、いままで先輩たちが頑張ってきてくれたという重みがすごくあったので……。今回のメンバーは前回のワールドカップ予選に出ていたメンバーが半分くらいいるんですけど、その前の、私が出させてもらった予選からはだいぶ顔ぶれが変わっていて、若い子たちが増えてきた。でも、メンバーは変わっていますけど、いままで頑張ってきてくださった方たちの努力があるから、今日の勝利に結びついたと思います」
有水ヘッドコーチも同じ思いだ。
「日本の女子ラグビー界がこれまで歩んできた歴史があり、カザフスタンという相手に本当に苦い思いをしてきました。ラグビーに関わってきた方々にとっても大きな勝利だと思います」
2017年ワールドカップに向けて、1つ大きな壁を乗り越えた。女子ワールドカップ予選は、来年だ。