大阪桐蔭を21-0で下し、9年(8大会)ぶり2回目の優勝に輝いた東海大仰星
(撮影:高塩隆)
(撮影:高塩隆)
雨中のグラウンド。大阪勢同士による春の頂上決戦。東海大仰星が、緻密さとしぶとさで白星を得た。
序盤は陣取り合戦で優勢だった。
SO岸岡智樹らが空いたスペースへキックし、落下地点の周辺で汗かき役が網を張る。
その延長線上となる、前半6分。敵陣22メートルエリアで鋭いタックルを見舞う。直後、近い場所でのラインアウトを起点にSH西久保空良が手堅く先制トライを挙げた。ゴール成功で、7-0。相手の蹴り返す余裕を奪う「立体的な立ち位置」を、湯浅大智監督は素直に褒めた。
守備でも光った。例えばスコアを14-0とするも大阪桐蔭高に攻め込まれた後半10分頃だ。
相手は密集脇で横長な陣形を作り、その端の選手が東海大仰星高のタックラーの死角を突いた。一気に相手のゴール前まで進んだ。ここからはFW陣が止めを刺す頃か…。
いや。大阪桐蔭高のSH杉山優平主将の実感は違った。
「うちのFWが引き気味に…」
東海大仰星高の面子は前に出て刺さっては起き上がり、もとの場所に戻ってはまた前に出た。無失点で、逃げ切った。SO岸岡は笑う。
「そればっかり、練習してます」
湯浅監督は、今季の最上級生が「1年生の頃から(自分たちに)自信を持っていなかった」と見る。それでも「仕事を全うする」長所を認め、組織力重視で育ててきた。結果、「ひたむきさを出してくれた」と笑った。
団体競技としてのラグビーの味わいと、コーチングの可能性。今春の王者は、この2つを示したのだった。
(文:向 風見也)